ガラスの破壊においては、負荷の供与から破壊に至るまでに幾つかの因子が存在します。その因子を時系列的に考えることにより、ガラス破壊に対する理解が深まります。また、その時系列因子を遡ることにより、ガラス破壊の原因を探ることが容易になります。
化学強化ガラスと熱強化ガラスでは、その製造法や問題点も異なります。化学強化ガラスはそのガラス組成を選択することにより、圧縮応力の値を大きくすることができますが、その厚さは大きくないために加傷性に注意を払う必要があります。逆に、熱強化ガラスでは引張応力も大きくなるので、破壊したときに断片化現象が発生し、その安全性が高まる傾向にあります。両者の特性を活かすためにはその強化メカニズムや破壊現象の把握が有効となります。
熱強化ガラスでは、形状や板厚、内応力や分岐の有無等によりその破壊現象は大きく異なりますが、熱強化ガラスのクラック伝播は約1500 m/sの高速度現象であり、その観察は容易ではありません。高速度カメラと光弾性法を組み合わせることにより、高速で伝播するクラックと応力場の変化を同時観察できるようになりました。部分強化ガラスでは、2つのクラックが連結する現象が観察され、この現象を説明するために、高速伝播するクラックの前方に発生する応力σCRを導入しました。この応力σCRを利用することにより、一部の不明であった高速のクラック伝播現象を説明できるようになりました。この応力σCRと今後の展開について、簡単に述べます。
さらに、研究開発中の新たな強度測定法である反力法とQuasi – static試験法についても簡単にお話します。この方法でガラス強度を測定することにより、従来は知られていなかったガラスの強度特性に関する知見を得ることができています。これらの知見を得ることにより、ガラスの破壊挙動の理解が深まることに寄与できることを期待しています。
- 入門編の概要
- ガラス破壊における時系列因子
- ガラス破壊の概要
- 負荷の供与
- 応力の発生と伝達
- 初期クラックの生成 (破壊始点の形成)
- クラック進展 (分岐)
- ガラス破壊
- 強化ガラスと強化方法
- 熱強化ガラスと化学強化ガラス
- 熱強化ガラスの強化メカニズム
- 熱強化ガラスの製造と問題点
- 化学強化ガラスの強化メカニズム
- 化学強化ガラスの製造と問題点
- 熱強化ガラスにおけるクラック伝播と分岐
- Cranz – Schardin型高速度カメラによる観察
- 光弾性法による観察
- 光弾性法による部分強化ガラスの観察
- 二股分岐と枝分かれ分岐
- 分岐の考え方
- クラックの連結現象と応力σCR
- 応力σCRの展開
- 新たな強度測定方法
- 反力試験法
- Quasi-static試験法
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