溶解度パラメータ (以下、SP値) は、“Like attracts like.”,「類は友を呼ぶ」で表される異種材料間の親和性の尺度である。したがってSP値の近いもの同士は,よく溶け,よく付き,よくぬれる。SP値は初めヒルデブランドらにより正則溶液を対象に定義されたが、その後ハンセンはSP値を極性材料に拡張し,いわゆるHSP値 (3DSP値) として広く応用されている。さらにカルガーやビルボアらは、酸塩基性を考慮した4DSP値への展開を試みた。
SP値は,たいていの化合物では原子団寄与法で推算できるが、一部の化合物、また粒子表面や気体などでは、プローブとの親和性を調べる実測法に頼らざるを得ない。どの方法を採用するにしても、得られた値にはかなりの違いが見られる。そこで材料特性に応じたSP値の求め方を取り上げたうえで、各手法の長所・短所や適用限界について説明する。
「溶ける」,「付く」および「ぬれる」は,ほとんどの微粒子系材料の調製における共通の要素技術である。そこで溶媒・樹脂の溶解/相分離性,樹脂・バインダーの付着/接着性,および微粒子の分散安定性の考え方をもとに、高分子ブレンド/コンポジット、粒子分散液およびキャピラリー懸濁液の調製と評価におけるSP値の役割について,多くの事例を踏まえて基礎から解説する。
第1日目 基礎編 – SP値の基礎と求め方
- SP値 (3D, 4D) の基礎と利用法
- 混合/分散におけるギブスエネルギー変化
- ヒルデブランドのSP値と相互作用パラメータ
- ハンセンの3DSP値 (HSP値)
- SP値の図示化法
- 二次元座標表示 (バグリープロット)
- 三次元座標表示と相互作用距離 (ハンセン距離)
- テァーズ線図 (三角座標) とてこの規則
- 4DSP値とEED (交換エネルギー密度)
- 化合物のSP値 (3D, 4D) の求め方
- 溶媒のSP値の求め方
- 物性値との相関
- ハンセン球法
- 混合溶媒のSP値の算出法
- 溶媒の4DSP値の求め方
- 高分子/界面活性剤のSP値の求め方
- 原子団寄与法による数値計算
- フェドース法
- バンクレベレン&ホフティザー法
- ホイ法
- ステファニス&パナイオトウ法
- Y-MB法とソフトウェアHSPiPの利用法
- 数値計算法の新しい流れ
- 溶解/膨潤法による測定
- 濁点滴定法
- ハンセン球法およびダブルハンセン球法
- フアントホフ則と拡張ハンセン法
- 二液混合グラジエント法
- 固有粘度法
- 4DSP値の求め方
- インバースクロマトグラフィー法による測定
- SP値 (3D, 4D) の課題
- SP値の計算法や測定法による相違
- SP値の精度と適用分野
- ハンセン球法におけるプローブ数としきい値
- SP値に及ぼす温度と圧力の影響
- 気体のSP値の測定法
- 気体の溶解度とSP値の定義
- 測定と応用例
- 粒子・固体表面のSP値 (3D, 4D) の測定法
- 凝集・沈降法
- 二液滴定法
- 遠心沈降下の分散濃度法
- 重力/遠心沈降下の界面沈降速度/沈殿体積法
- 凝集粒子径法
- 接触角/ぬれ張力法
- インバースクロマトグラフィー法による測定
- 低磁場パルスNMR法による測定
第2日目 応用編 – 微粒子系材料の調製と評価におけるSP値の役割
- 高分子溶液/ブレンドの相溶/相分離性の制御と評価
- 高分子溶液の相溶/相分離性の制御と評価
- フローリー・ハギンス理論と相互作用パラメータ
- SP値との関係
- インバースクロマトグラフィーによる測定
- 相溶/相分離性を応用した材料調製例
- マイクロカプセル
- ナノファイバー
- 3Dスキャフィールド
- 高熱伝導基板用接合剤
- 化学センサー
- エアロゲルの調製
- 高分子ブレンドの相溶/相分離性の制御と評価
- 相図と高分子ブレンドの構造
- 相溶/相分離性を応用した材料調製例
- 相分離/傾斜分離塗装
- 半導体パッケージにおけるダイボンディングフィルム
- ポリマー改質アスファルテン
- 高分子コンポジットにおけるフィラーの付着/分散性の制御と評価
- 付着・接着の基礎
- SP値を用いたフィラーの付着/接着性の評価と調製例
- SP値差による評価
- PP基板の接着強度
- ゴム中CNTの分散性と導電率
- ハンセン距離とRED (相対的エネルギー差) による評価
- PVDF中のSWNTの分散性と材料強度
- エポキシ樹脂中のコア/シェルナノ粒子の付着性と強度
- ハンセン球/溶解窓の重なり度による評価
- PP中シリカの表面処理と分散性
- 電極材料における複数フィラーのバインダー選択
- レジンコンクリートにおけるフィラーの表面処理効果
- 粒子分散液/キャピラリー懸濁液の分散安定性の制御と評価
- 粒子分散液の分散安定化
- 粒子分散液の調製工程と課題
- 粒子分散液のぬれ/分散化と良溶媒の選択
- 二液混合による良溶媒の選択
- 相互作用距離を用いた良溶媒の選択
- 粒子分散液の立体反発安定化
- 分散剤による浸透圧効果と体積制限効果
- 相互作用パラメータと分散剤の溶解性/伸張性
- 高分子ブラシを用いたナノ粒子の分散安定化
- キャピラリー懸濁液の安定化
- 分散剤の働きと選択指針
- 分散剤の種類と構造
- 分散剤の選択指針
- 分散剤の構造と新規高性能分散剤開発
- ブロック型/くし型分散剤
- 新規高性能分散剤の開発と応用
- 高分子ブラシと自己組織化単分子膜
- 分散剤の吸着機構
- 吸着等温線と吸着量の測定法
- 最適添加量と枯渇現象
- 粒子/分散剤の酸塩基度の測定と吸着機構
- SP値を用いた分散剤の吸着性と分散安定性の評価
- 溶媒,分散剤,および粒子間のSP値のバランス
- ダブルハンセン球を用いたCBの最適分散剤の選択
- 4DSP値を用いた最適バインダー (分散剤) の選択
- 粒子分散液の分散安定性試験法とチキソ剤の選択
- 湿潤点・流動点
- 粒度ゲージ法や超音波減衰法によるフロック径測定
- X線・中性子散乱法
- レオロジー法
- 降伏応力とチキソトロピー・逆チキソトロピー
- 動的粘弾性
- チキソ剤の働きと選択指針
- まとめ
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