本セミナーでは、電気自動車、燃料電池自動車、天然ガス自動車など次世代自動車の世界的な市場動向や各国の関連政策動向と車載用途も増え、更なる供給の逼迫が予想されるリチウムイオン電池原料 (リチウム、コバルト) の開発状況、価格動向について解説いたします。
ウクライナ危機が起こって1年近くが経過し、原油価格、天然ガス価格をはじめとした化石燃料価格が高騰しているものの、脱炭素への長期的な流れに変化はない。むしろ、エネルギー安全保障、エネルギー自給率の向上、化石燃料依存からの脱却の観点から、燃焼しても炭酸ガスを排出しない、アンモニア、水素への期待が強まっている。 日本が先駆けていた、水素社会の実現についても、ウクライナ危機を経て、欧州諸国、米国、中国等が、相次いで水素戦略を打ち出し、日本を猛追している。EU (欧州連合) は、2022年9月に、域内生産と輸入により、2030年までに、年間2,000万トンのグリーン水素を調達すると表明している。日本政府も、アンモニア、水素のさらなる普及に向けて、クリーンエネルギー戦略を策定する。2050年のカーボンニュートラルの実現、2030年度の温室効果ガス排出量46%削減には、2030年の1年間に17兆円、今後の10年間に官民合わせて150兆円に達する投資が必要となると試算されており、水素、アンモニアについては、政府による支援がなければ導入拡大は見込めないとして、積極的な支援の必要性を打ち出している。水素社会、アンモニア社会を実現するために、2030年の水素供給コストを、現時点の1立方メートル当たり100円から30円に、アンモニアを20円から10円台後半に引き下げる目標を設定する。 日本のみならず、欧米先進国も、ロシア産石油・天然ガス依存からの脱却、脱炭素と経済成長の両立を目指し、水素、アンモニア社会への動きを加速している。一度は電気自動車に敗北したかにみえた、燃料電池が見直されるようになってきている。水素・燃料電池戦略協議会が、ロード・マップを策定し、定置型燃料電池、燃料電池車の普及、水素供給システムの確立、水素発電等の目標を掲げている。日本では、世界でいち早く量産化された家庭用燃料電池 (エネファーム) は、2021年8月には販売累計が40万台を突破し、2030年までに530万台に拡大するという意欲的な目標が出されている。 米国カリフォルニア州、中国をはじめとして、ZEV (炭酸ガス排出ゼロ車) の拡大が求められる中において、燃料電池車は、水以外の汚染物質を一切出さないという利点を持つ。2020年以降に、日本が世界に先駆けて、安価な燃料電池車の普及を計画し、2025年には世界で180万台、日本で20万台とし、日本国内においては、2030年に80万台、2040年に300万台~600万台、航続距離1,000キロメートルという具体的な目標を設定している。 世界の水素ステーションは3,100ヵ所に達すると見込まれる。今後2030年に向けて、燃料電池を利用した輸送用機械を世界合計1,000万台とする目標を設定し、燃料電池による次世代自動車用燃料として、水素、天然ガス、低品位炭の利用が大幅に増加することが見込まれる。脱炭素実現に向けて、米国、中国、ドイツ、韓国は、水素社会を国家戦略に位置づけている。2030年には日本国内の水素市場は1兆円、2050年には、水素ステーション、燃料電池車、水素発電所をはじめとした水素インフラストラクチャー市場は、日本で8兆円、世界で160兆円、関連市場も含めると280兆円規模という大きなビジネス・チャンスが期待されている。それと同時に、アンモニアも、脱炭素エネルギーの切り札として、注目されている。エネルギー基本計画において、2030年度の電源構成の1%に、炭酸ガスを排出しないアンモニアと水素を利用することを明記した。アンモニアは、水素とともに、石炭火力発電、天然ガス火力発電の燃料に混ぜて、炭酸ガス排出削減を実現し、船舶燃料としての利用も考えられ、化学製品生産の有力なエネルギーとなることが期待されている。2050年には、世界のエネルギー需要の24%は、水素エネルギーが占めるという予測も行われており、世界の水素需要は年間6億トンを超えることが見込まれている。 家庭用燃料電池、燃料電池車、燃料電池トラック、燃料電池バス、水素ステーション、水素発電、水素エンジン、水素還元製鉄、アンモニア船舶をはじめとした水素とアンモニアを取り巻く最新動向と、ウクライナ危機後を見据えた経済再生策と気候変動対策とアンモニア・水素社会の未来について、資源エネルギーの第一人者が分かりやすく解説する。
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