固体の粉砕では、巨視的には粒子径の減少が目的であるが、特に微粒子を得る粉砕工程では付着凝集や周囲の物質との相互作用 (物理化学的変化) が起こる。この変化はメカノケミカル効果と称される。
固体の粉砕を経験されておられる技術者・研究者が抱える課題の一つは、乾式並びに湿式粉砕操作の過程での様々なトラブルである。それは固体の粉砕を継続することによる微粒子凝集 (逆粉砕) 、特性変化、周囲物質との相互作用などが要因であり、それによって固体の粉砕工程後の産物の液相中への分散・溶解工程での不具合や、成形工程を経た焼成工程での不良品生成、ひび割れなどの問題が生じる場合がある。これらの原因は、往々にして粉砕工程で発現するメカノケミカル効果に起因する場合が少なくない。
本セミナーでは、固体の粉砕によるメカノケミカル効果の基礎研究事例を紹介し、そこから上記した現象に対する理解ばかりでなく、課題の解決に繋がるヒント・糸口を解説するようにする。
本セミナーでは、このメカノケミカル効果がどのような機構で発現するのか?を理解し、その制御法についての理解が得られる。また、様々な固体に対しての粉砕力の作用で発現するメカノケミカル効果を利用した合成や特性変化の事例を知ることにより、粉砕処理が物質処理・有価物回収としてのポテンシャルを持っていることに気付く。固体の粉砕→溶解加熱処理過程では、様々な物質の原子・分子レベルの評価法の必要性と有効性にも気付き、そこから新たな粉砕処理に繋がるアイディアが生まれる可能性が高いし、各自が抱える粉砕過程での種々の課題の解決のためのヒントやポイントも得られる。
- はじめに
- 粉砕過程で起こるマクロとミクロな変化
- メカノケミカル効果の発現機構と評価
- 粉砕による各種固体の結晶構造変化
- カルシウム系物質のメカノケミカル合成
- カルシウム・アルミネート (C3A) の室温合成
- カルシウム・スルホ・アルミネート (CSA) 水和物の合成
- 石炭灰からの水硬性粉体の製造
- 二水石膏からのプラスターの製造
- 機能性酸化物・水和物のメカノケミカル合成
- ペロブスカイト型酸化物の合成
- 機能性フッ化物の合成
- 3価と6価のクロム酸化物の粉砕による磁性体 (CrO2) の合成
- 酸化物粒子表面への非金属元素ドーピングと可視光応答型光触媒の製造
- ケイ酸カルシウム水和物 (軽量耐熱材料) の合成
- ハロゲン含有樹脂のメカノケミカル分解
- ポリ塩化ビニル (PVC) の脱塩素による分解
- ポリテトラフルオロエチレン (PTFE) の脱フッ素による分解
- ポリフッ化ビニリデン (PVDF) の脱フッ素による分解
- ヘキサブロムベンゼン (HBB) の脱臭素による分解
- 天然資源のメカノケミカル処理と有価物回収
- タルクや蛇紋岩からのMgの選択的回収
- カオリナイトからのゼオライト合成
- 硫酸塩鉱石からの水酸化物と炭酸塩の生成
- シーライトからの可溶性タングステン塩の生成
- 廃棄物・未利用資源のメカノケミカル処理と有価物回収
- 三波長型廃蛍光管からのレアアース回収
- ITOスクラップからのIn,Snの回収
- 廃二次電池 (LIB) 正極材からの有価物回収
- 重油燃焼煤 (EP dust) からのバナジウム回収
- 粉砕+加熱処理によるバイオマスや樹脂からの水素製造
- バイオマス (セルロース) からの高純度水素の製造
- 廃プラスチック、稲藁、廃紙、下水汚泥などからの水素の製造
- 課題の解決策
- 本セミナー内容を通じて、様々なトラブルがあった。
例えば、
- 大量処理はどうするのか?
- 非晶質化では、良好な結晶質物質をどうすれば得られるかか?
- メカノケミカル効果 (機械的活性化) の制御法は?
- 湿式粉砕でのメカノケミカル効果は可能か?
- メカノケミカル効果を迅速に達成するにはどうすればよいか?
- メカノケミカル効果を支配する因子は何か?
- メカノケミカル効果に影響する助剤は?
- メカノケミカル効果とコンタミネーション (摩耗) の関係?
- むすび
- 質疑応答
- 時間の許す範囲でセミナー参加者からのご質問に対応させていただきます。
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