アルミニウムのアノード酸化 (陽極酸化) 皮膜は、古くからその腐食耐性、装飾性、誘電特性の工業的な活用がなされてきたが、近年、そのナノポーラス構造が電池材料、ナノデバイス作製のための出発構造 (テンプレート) としても世界的に注目され、機能性材料としての研究も進んでいる。また、マグネシウムやチタン、ステンレス、など種々の金属のアノード酸化による新規な機能創製や触媒への応用も注目されている。
講演者は長い間アノード酸化皮膜の研究とその応用に携わって来たが、本講座ではその経験を基に、いわば「アノード酸化のすべて」の総合的な概説を行う。皮膜生成機構、微細構造の解析、多孔質構造の定量評価法、自己規則化皮膜の形成法、合金組成の影響など、アノード酸化皮膜の生成に関する基礎的な事項と、皮膜の特性や機能を引き出す応用に関して種々の事例を通して解説する。TEM、SEM、XPS、GDOESなどを用いた最先端の構造解析とその解釈を含め、最近の研究成果についても紹介する。
アルミニウムを中心とした種々の金属や半導体のアノード酸化 (アノード処理) により表面にナノスケールの構造を持つポーラス酸化皮膜付与する手法や原理、応用例を基礎から詳細に学ぶことができます。また、質疑応答も重視しています。
- アルミニウムのアノード酸化皮膜の生成機構の基礎、その研究の歴史と背景
- バリア型皮膜の生成のメカニズム
- ポーラス型皮膜の成長と孔発生過程
- ポーラスアノード酸化皮膜のセル径および孔径の制御
- 電解液による形態の差異と制御
- セル形態の電圧依存性
- ポロシティの制御
- 規則構造と不規則構造
- 電解液によるアノード酸化皮膜の組成 (アニオン分布) と構造の差異
- 透過電子顕微鏡を用いた酸化皮膜中のアニオン分布と溶解特性の差異
- 硫酸皮膜
- シュウ酸皮膜
- リン酸皮膜
- クロム酸皮膜
- アノード酸化ポーラスアルミナの自己規則化
- 自己規則化条件
- 自己規則化の制御とそのメカニズム
- インプリント法による理想孔配列の形成
- 前処理による表面組成と形態
- アルカリ脱脂皮膜の表面形態
- 鏡面を得るための電解研磨法
- 封孔処理とは
- 電子顕微鏡による形態変化と封孔挙動
- 沸騰水封孔、酢酸ニッケル封孔、Li塩封孔のそれぞれの特徴と耐食性
- ポアフィリング法による多孔質構造とバリア層の定量評価+ガス放出制御
- バリア型皮膜の構造と誘電特性 (キャパシタ特性:Nbを含む)
- バリア型皮膜の構造と欠陥
- 皮膜の誘電特性に対する電解質アニオンの影響
- 不透明白色皮膜の形成
- 不透明白色皮膜の生成原理
- 電解条件と白色度の制御
- 熱および化学耐性を持つ結晶性αアルミナメンブレンの作製と評価
- メンブレンとしての厚膜の作製
- Al素地からの剥離法
- 加熱による結晶化と湾曲の防止
- 結晶性メンブレンの構造解析と耐熱・耐化学性
- 合金組成および電源波形の皮膜構造に及ぼす効果
- 合金組成によるアノード酸化皮膜特性の変化
- 交流、矩形波による皮膜構造の変化
- 高周波電解によるダイカスト材のアノード酸化皮膜の均一膜厚化
- マグネシウムのアノード酸化皮膜の構造と耐食性
- マグネシウム合金表面の自然酸化膜と耐食性
- アノード酸化と化成処理・封孔処理
- プラズマアノード酸化 (PEO) の成長とその構造
- 電解液による構造の違い (リン酸塩とケイ酸塩)
- アパタイト化 (生体親和性付与)
- チタンのアノード酸化
- ポーラスチタニアの生成と構造
- ポーラスチタンのアノード酸化と生体親和性の付与
- シリコン、InPなど半導体基板のアノードエッチングによる微細加工
- Zn、Sn、SUSなど種々の金属のアノード酸化皮膜生成挙動と特性
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