近年、スーパーコンピュータを活用した人工知能・AI等の情報処理技術の適応により、遺伝性疾患を始めとする希少疾患の病態解明が進んでいる。加えてm-RNA医薬や遺伝子治療・再生医療等製品などの新たな創薬手法も発達しており、国の開発支援策も相まって、新たな稀少疾患・アンメットニーズへの挑戦がベンチャーや製薬企業で増加している。
しかしそのCMC・製剤設計には早期での戦略立てが必要である。希少疾病の多くは遺伝病であり特に小児患者では用量設定が難しい。患者の多くは嚥下や行動に不自由が伴うため剤型設計に注意する。製造は大量・頻回ではないため、製品規格の絞り込みや製造単位、検査コスト等に注意して安定供給を図ることが必要である。最近では国際共同治験・外国製造も盛んであるが、各国の規制や流通経路、推奨される製品形態や服薬方法の違い等も考慮すべきである。また、一連の開発が終了し、製造販売承認に至った場合でも、一度承認された製品標準書を変更管理するのは大変な労力や時間・費用がかかるものである。
本講座ではこうした希少疾病薬のCMC設計・製品開発時の注意事項と対応策について、演者の経験と失敗談も交えてまとめてお話したい。
- はじめに
- 世界および日本における希少疾病の定義と分布
- 希少疾患の定義と種類
- 世界・地域に特徴的な希少疾病
- 日本における希少疾患と難病の定義
- 患者学 (患者中心の医療) の動向
- 患者数、分布、Patient Journey等の調査方法
- 希少疾病に対するCMCおよび臨床試験計画
- CMC設計時に求められること
- CMC設計と治験薬GMP
- 患者が持続服用可能な剤型をまず考える
- 製品の規格数、包装形態
- 生物学的同等性試験による製剤間の同等性証明
- 日本における希少疾病用医薬品の開発とその支援制度
- 希少疾病用医薬品指定 (ODD) の要件と申請方法
- 臨床試験における課題と対応
- ブリッジング試験
- 対照薬選定・外部対照
- バーチャル治験等の事例
- 適応症と薬価算定
- 希少疾病用医薬品の製造とその課題
- 医薬品の製造とGMP
- 製造におけるBOMと原価計算
- 品質保証と出荷判定に至るために必要な検査
- 製造・包装表示・品質保証・物流における課題と対応
- 外国製造所と国内製造所との役割
- 薬制の実務
- 価格管理
- 希少疾病薬のライフサイクルマネジメントと事業戦略
- 再審査制度と製造販売後調査
- 製造販売後調査における全例調査と再審査制度
- 安全性情報管理と添付文書改訂
- 情報提供ガイドラインの順守
- 製造・物流に係る固定費対策の事例
- 販管費対策の事例
- 市場出荷後の製品情報管理
- 保存安定性試験不適合、異物混入発覚等による回収事例
- まとめ
- バリューチェーン構築に向けて早期からCMCで決定しておくべきこと
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