酸化ガリウムは5つの結晶多形をもつ新しい材料ですが、市販化にあたり多くの難点がありました。主に以下の3点です。
- (1) 熱伝導率がきわめて小さい (サファイア基板と同等)
- (2) 市販化のためのコストがかかる
- (3) p型が作製出来ない
最初の (1) はパワーデバイス材料として致命的な難点でした。そして (3) については、酸化ガリウムの自己束縛励起子が室温において安定である事がβ – Ga2O3およびα – Ga2O3で報告されており、ドーピングによるp型伝導の実現は困難でした。これらの難点とそれを克服するための試み等を前半にお話します。
後半は、大きな可能性を秘めた新材料である二酸化ゲルマニウム (GeO2) の開発状況のお話をします。GeO2は古くて新しい材料で、Ge金属表面の酸化物層として知られますが、一方でバンドギャップが4.6 eVの超ワイドギャップ半導体です。2019年頃よりパワーデバイスとして優れた性能をもつことが米国を中心に盛んに理論予測され始めました。具体的には、ドーピングによるp型とn型の導電性制御が可能である事、電子、正孔ともに高い移動度を有している事です。2020年にMBEによる極薄膜 (4時間成長で40 nm) の作製が報告されましたが、非常に製膜が困難な材料です。当研究室では、2021年に1μm/h以上の成長速度をもつ厚膜の作製を行いました。それらの製膜手法と今後の展開についてお話をします。
コランダム構造酸化ガリウム (α-Ga2O3) の特徴や、デバイス化におけるそれらの難点を学べます。さらに、酸化ガリウムと同等以上のパワーデバイス材料特性が期待できる次世代のパワーデバイス材料 (二酸化ゲルマニウム) についての知識が得られます。
- 酸化ガリウムの欠点と、その克服
- 株式会社FLOSFIAによるデバイス市販化 (評価用ボード)
- 低熱伝導率、高コストの克服
- 酸化ガリウム (Ga2O3) のp型が実験的理論的に不可能な理由
- p型酸化イリジウムを用いたpn接合デバイスの作製
- 新しいパワーデバイス材料、二酸化ゲルマニウム (GeO2) の可能性
- 二酸化ゲルマニウム (GeO2) の可能性
- バンドギャップ4.6 eV
- p型とn型が作製可能 (理論予測)
- 高い移動度
- 安価に基板作製可能
- 酸化ガリウムの2倍の熱伝導率
- なぜ、二酸化ゲルマニウム (GeO2) の薄膜合成はきわめて困難なのか?
- 世界初の二酸化ゲルマニウム (GeO2) 厚膜の合成と高速成長
- 二酸化ゲルマニウム (GeO2) のバンドギャップ変調
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