近年、遠隔操作ロボットの触覚情報提示や、バーチャルリアリティにおける触感再現、装具の触覚フィードバック機能など、触覚情報の提示に関する技術に注目が集まっています。また、素材や製品の質感評価、外科手術のパフォーマンス解析、直感的な操作が可能なタッチインタフェースなど、触覚情報の計測に関する技術への要求も高まっています。このようなハプティクス (触覚) 技術において、人の知覚特性の複雑さやデバイスの構造上の制約などが開発の障壁となっています。
本講義では、触覚情報の計測と提示に関する基礎および最新の研究、それらの応用を紹介するとともに、新たに触覚デバイスを開発するために必要な実践的知識からその活用による応用システムまで、講師のこれまでの開発経験に基づいてわかりやすく解説します。さらに最新の研究動向に基づき、今後の展望を聴講者の皆様と一緒に議論したいと考えています。
- 触覚情報の計測と提示の概要
- 背景 (触覚情報を「計る」「伝える」意義)
- 触覚センサの基本原理と開発例
- 触覚ディスプレイの基本原理と開発例
- 触覚の科学と工学
- ヒトの触覚
- 皮膚・筋骨格と感覚受容器
- 触覚の知覚特性・脳機能
- 触覚に関する物理モデリング
- 力触覚に関わる物理量
- 力の大きさと体感
- 触覚インタフェース設計に必要な工学知識
- センサの基礎
- アクチュエータの基礎
- 触覚情報の計測・評価技術
- 対象の物性 (硬さ・表面状態) を測る
- 触に伴う現象 (接触・振動・力・滑り) を測る
- 物理指標と感性指標の関係
- ヒトの触感を測る
- 硬さ知覚の評価
- 知覚特性
- 心理学的測定法
- 材質認識機構のモデル化
- 触覚情報の提示技術
- 方式による分類 – 原理・特徴や長短所 等 -
- 摩擦を利用した方法
- 流体圧・空気圧アクチュエータを利用した方法
- 電気刺激
- 様々な感覚提示手法 (ハプティックレンダリング)
- 振動・摩擦感覚の提示
- 力覚の提示
- 錯覚を利用したハプティックインタフェース
- クロスモーダル知覚
- 触覚ディスプレイ設計のポイントと課題
- 触覚デバイス開発の流れ
- 力触覚ディスプレイの評価方法
- 触覚刺激の規格化と安全設計
- ハプティクスの最先端と応用
- 最新の研究事例
- 機械的制約を軽減する方法
- 柔軟・多機能な触覚センサ
- 生体の応答を活用した接触力推定
- トモグラフィ式触覚センサ
- 応用例
- シミュレータ・訓練用装置
- 遠隔操作・触覚情報の伝送・共有
- 身体動作のナビゲーション
- 様々な部位への刺激提示
- ツールキットなど
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