本セミナーでは、デザイン思考によるプロジェクトマネジメントの仕方 (特に、ニーズとシーズのベストマッチングの仕方と、トップダウンによる全体最適化の仕方) や、その効能・効果について、具体的な事例に基づき、分かりやすく説明いたします。
デザイン思考とは、課題 (ニーズ) の把握と、課題解決方策 (シーズ) の検討を、同時に並行して行うことにより、課題解決で期待される効果の最大化 (ニーズとシーズのベストマッチング) を追求する取り組み方 (思考法) のことです。あたかも、縦糸と横糸を織り成して、絵柄 (デザイン) を編み出すような取り組み方です。このようなデザイン思考は、グローバルスタンダードである性能発注方式の取り組み方 (つまり、ニーズとシーズをベストマッチングした上で「このようなものを作ってくれ」といった取り組み方) と、表裏一体の関係にあると言えます。ところが、我が国では、独自のガラパゴスともいえる仕様発注方式の取り組み方 (つまり、詳細な仕様を確定させた上で「このとおりに作ってくれ」といった取り組み方) が昔も今も普遍的であり、性能発注方式の取り組み方 (デザイン思考を含めて) にはほとんど馴染みが無いところです。しかしながら、技術革新が激烈な分野でオープンイノベーションにより画期的な製品を創り出す場合や、DX (Digital Transformation) の推進に向けてソフトウェアを開発する場合には、詳細な仕様を確定させた上で「このとおりに作ってくれ」といった仕様発注方式の取り組み方ではうまくいくはずもありません。そこで、ニーズとシーズをベストマッチングした上で「このようなものを作ってくれ」といった性能発注方式の取り組み方の出番となるところですが、誠に残念なことに、我が国では性能発注方式の取り組み方にほとんど馴染んでいないのです。このため、オープンイノベーションにより画期的な製品を創り出す場合や、DXの推進に向けてソフトウェアを開発する場合であっても、我が国では仕様発注方式の取り組み方 (考え方) が色濃く反映されてしまい、その結果として齟齬を来してしまった事例には枚挙にいとまが無いところです。これでは、プロジェクトマネジメント云々どころではありません。 例えば、新型コロナ対策として期待されながらも大きな問題が生じてしまった「接触確認アプリのCOCOA」や「アベノマスク」は、いずれも仕様発注方式の取り組み方 (考え方) が色濃く反映された国家プロジェクトでした。また、企業の業務運営の基盤を成す基幹系システムを、DXの推進に向けて刷新しようとする民間のプロジェクトでは、仕様発注方式の取り組み方 (考え方) が災いして大規模なソフトウェア開発に失敗し、その責任を巡って裁判沙汰となってしまった事例も少なくありません。それゆえ、新規のプロジェクトや事業を成功させるには、これまでの仕様発注方式の取り組み方 (考え方) に立脚したプロジェクトマネジメントではなく、これからは性能発注方式の取り組み方 (考え方) に立脚したプロジェクトマネジメント、つまり、デザイン思考によるプロジェクトマネジメントが欠かせないと言えます。 ところで、新規のプロジェクトや事業でその達成目標に掲げる主要な要求要件の間には、トレードオフ関係、つまり、彼方を立てれば此方が立たなくなる相反関係が生じます。このようなトレードオフ関係にある要求要件に数値目標を設定しようとする場合に、各要求要件ごとに最適と判断した数値を割り振っていくといった、「ボトムアップによる部分最適化」のアプローチではうまくいくはずがありません。そこで、このような場合には、トレードオフ関係にある要求要件の全体を一つの達成目標として捉えて、トレードオフ関係を熟慮した上で、各要求要件の目標数値については各々の「最大値」の位置に並び立たせるといった、「トップダウンによる全体最適化」のアプローチが必須となります。要するに、新規のプロジェクトや事業の成否は、プロジェクトマネジメントによる全体最適化の成否次第であると言えるのです。 そこで、本セミナーでは、デザイン思考によるプロジェクトマネジメントの仕方 (特に、ニーズとシーズのベストマッチングの仕方と、トップダウンによる全体最適化の仕方) や、その効能・効果について、具体的な事例に基づき分かりやすく説明します。
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