医薬品品質試験への実用化にむけたラマン分光法とデータ解析

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第1部 ラマン光学活性分光を用いた溶液中タンパク質構造の解析

(2022年7月21日 10:30〜13:00)

 キラリティーは3次元の物体や分子がその鏡像と重ね合わすことができない性質のことで、タンパク質に代表される生体関連分子の多くがキラルである。このためタンパク質などをターゲットとする薬剤の多くもキラルであることが知られている。ラマン光学活性分光は鏡像異性体を区別することができる振動分光であり、キラル分光の一つである。  本講演ではラマン光学活性分光の基礎について解説する。さらに小・中サイズの分子の絶対配置の決定や溶液中タンパク質の構造解析などの応用例を紹介する。

  1. はじめに
  2. ラマン光学活性分光の原理・基礎
    1. 振動分光
      1. 赤外吸収
      2. ラマン散乱
      3. 共鳴ラマン散乱
    2. ラマン光学活性分光
      1. ラマン光学活性分光の原理
      2. ラマン光学活性スペクトルの例
      3. 初めて観測されたラマン光学活性スペクトル
      4. ラマン光学活性分光の理論
      5. 共鳴ラマン光学活性分光
  3. ラマン光学活性分光装置
    1. ラマン光学活性スペクトルの測定法
      1. 入射円偏光方式
      2. 散乱円偏光方式
      3. 補正機構
    2. ラマン光学活性分光装置の例
      1. 市販のラマン光学活性分光装置
      2. 自作のラマン光学活性分光装置
  4. ラマン光学活性分光の応用例
    1. 小分子への応用:絶対配置の決定
      1. 実測スペクトルの例
      2. 量子化学計算による解析
    2. ペプチド、タンパク質への応用
      1. ペプチドのコンフォメーション解析
      2. タンパク質の二次構造解析
      3. 最先端の計算化学的手法によるスペクトル解析
    3. 色素分子、色素タンパク質への応用
      1. 色素タンパク質への応用例
      2. 共鳴ラマン光学活性分光
      3. 活性部位の構造解析
  5. まとめ
    1. ラマン光学活性分光で分かること
    2. 今後の課題と展開

第2部 ラマン分光法を用いた医薬品原薬・製剤の品質管理

(2022年7月21日 14:00〜16:00)

 日本薬局方の第17改正 第2追補 (2019年6月公示) において、ラマン測定法が一般試験法に収載された。ラマン散乱は、赤外吸収 (IR) と相補的な振動分光法として古くから知られていたが、既に広く普及しているIR測定法とは対照的に、発展したのは比較的最近のことである。  ラマン分光法では基本的に非破壊的な分析が可能であり、多彩な測定モードが実用化されていることから、本講演ではラマン分光法の基本的な原理とともに、顕微およびマッピング測定、透過測定、プローブ型検出器を用いた反応過程モニタリングなどを医薬品分析に用いた例を紹介する。

  1. ラマン分光法の原理と特徴
    1. ラマンと赤外の比較
    2. ラマン分光法の利点
    3. ラマン分光法の測定モード
    4. 低波数領域 (LF) ラマン
  2. ラマン分光法を用いた医薬品の品質管理
    1. 医薬品 (原料) の確認試験
      • 多形の識別
      • in situ昇温・調湿測定
      • 結晶形の探索スクリーニング
    2. 顕微イメージング
      • 錠剤 (粉体) 表面の成分分布
      • 結晶形の識別 (多形,共結晶の解離)
    3. 共焦点ラマンイメージング
      • 軟膏剤
      • クリーム剤
    4. 透過ラマン定量
      • 錠剤
      • 軟膏剤
    5. プローブ型検出器を用いたモニタリング測定
      • 造粒工程
      • リポソームからの薬物放出

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