脱炭素社会実現に向け期待される"バイオものづくり" 微生物の有効活用技術とその未来

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本セミナーでは、微生物を有効活用するための要素技術開発動向について、微生物による液体燃料や汎用化成品、医薬品原料などの機能性素材の生産技術から、水素生産やCO2メタネーションへの微生物の活用、微生物による発電技術と燃料電池への応用までを解説いたします。

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プログラム

第1部 微生物を利用した有用物質生産技術の開発動向と今後の展望

(2022年8月9日 10:20〜11:50)

 微生物はアルコールやアミノ酸、抗生物質など、古くから様々な有用物質の生産に用いられ、育種や選抜 (スクリーニング) により改良を重ねながら工業的に利用されてきました。  また、近年、遺伝子組換え技術による物質生産能力の向上や、次世代シーケンサーやバイオインフォマティクスによる遺伝子機能解析の効率化、ゲノム編集に代表される先端的な遺伝子工学技術の開発が進み、従来と比べて高度な代謝経路設計、遺伝子配列設計、微生物構築が可能になってきました。  そうした中、世界的に脱炭素社会実現に向けた動きが加速し、環境・エネルギー分野や素材・材料分野においても、脱化石燃料をキーワードに微生物を利用して燃料や素材などの有用物質を生産する“バイオものづくり“への注目が高まっています。また、付加価値の高い機能性素材を高効率に生産するバイオ技術の開発が期待されています。  本セミナーでは、従来、石油化学で製造されてきた液体燃料や汎用化学品 (プラスチック,化学繊維原料) 、医薬品原料やサプリメントなどの機能性素材を、微生物を活用して経済的かつ環境に負荷をかけない手法で効率的に生産する技術の開発動向について解説します。  また、メタボローム解析をはじめとする先端計測技術による微生物育種フローの開発など、従来の手法を超える物質生産性の向上手法や、新たな物質生産プロセスの開発についても紹介します。

  1. はじめに
    1. 広がるバイオものづくり
    2. 市場動向と企業事例
  2. 要素技術の開発動向
    1. 利用される微生物の基礎と一般的な利用方法
    2. 遺伝子組換え技術と物質生産の効率化
    3. 次世代シーケンサーやバイオインフォマティクスなど遺伝子の機能解析
    4. ゲノム編集など先端的な遺伝子工学技術
    5. 現状の技術課題
  3. 先進研究と今後の展望
    1. 今後期待される用途分野、高機能化への研究開発動向や注目される技術トレンド
    2. 微生物育種フローの開発
    3. 微細藻類・シアノバクテリアを利用したCO2からの直接物質生産
    4. 今後の展望

第2部 シアノバクテリア・光合成細菌による光生物学的水素生産

(2022年8月9日 12:40〜13:40)

 低炭素社会の実現には化石燃料を代替する再生可能エネルギーの積極的な活用が望まれる。再生可能エネルギーの中でも、水素エネルギーは、使用時に温室効果ガスである二酸化炭素を排出せず、廃棄物が水のみであるため低環境負荷の点から特に期待が大きい。しかし、従来の水蒸気改質による水素製造法では、製造段階で二酸化炭素を排出してしまう。将来的に期待される水素製造法の一つに、光合成微生物を利用した光生物学的水素生産がある。光生物学的水素生産では、太陽から供給される光エネルギーによって光合成を駆動した後、光合成産物から水素を生産する。このため、製造段階・利用段階のいずれにおいても二酸化炭素を排出しない完全な二酸化炭素フリー水素ができる。しかし、光生物学的水素生産で化石燃料を代替するためには、コストやスケールアップなど、解決しなければならない課題も少なくない。  本稿では、我々が行なっているシアノバクテリアと光合成細菌による光生物学的水素生産の研究を中心に、光生物学的水素生産の現状を概説する。

第3部 微生物を利用した石油の増進回収法と地中貯留したCO2の地下バイオメタネーション

(2022年8月9日 13:50〜15:20)

 世界的な脱炭素の潮流が高まる中で、今後、石油などの化石エネルギー資源の新規開発事業は縮小される方向に向かうと予想されている。一方で、エネルギーのみならず、化学製品の原料としての石油の役割が急速に小さくなることは考えにくく、石油需要は引き続き堅調に推移すると予想されている。この石油需要に対応するためには、現在生産中の油田における石油の生産を効率化し、生産量の維持向上を図る技術が必要である。既存の技術によれば地下に眠る石油の半分以上は地上に生産できないと言われており、この取り残される石油を回収する技術が石油増進回収法 (Enhanced Oil Recovery, EOR) である。様々なEORが提案され研究される中で、油価の激しい乱高下に対応しうる低コストなEORに加え、環境に優しいEORが求められ、その一つとして微生物を利用したEORが注目されている。本セミナーの前半では、微生物を利用したEOR (Microbila EOR, MEOR) について解説する。  さらに、脱炭素の取組の一つとして二酸化炭素の回収・地中貯留 (Carbon Capture and Storage, CCS) が注目されているが、最近では回収した二酸化炭素を単に地下に隔離するだけではなく、有効利用する (Carbon Capture, Utilization and Storage, CCUS) 考え方が主流になりつつあり、水素と反応させてメタンを生成するメタネーションなどがさかんに研究されている。講演者は前述したMEORの発想にヒントを得て、メタネーションを地下の石油貯留層内で、かつ微生物を利用して行なうことを想定した研究を行なっている。石油貯留層内には二酸化炭素をメタンに変換するメタン菌が生息しており、これを人為的に活性化させることにより、地下に貯留した二酸化炭素を数十年レベルでメタンに変換する技術の確立を目指している。本技術の考え方と目標を達成するための技術課題について解説する。

  1. 石油の生産方法について
  2. 取り残し石油の増進回収法について
  3. 微生物を利用した石油の増進回収法~技術課題と講演者の研究~
  4. 二酸化炭素の回収・利用・地中貯留について
  5. 枯渇油田を利用した二酸化炭素の地下バイオメタネーションについて
  6. 地下バイオメタネーションの技術課題と講演者の研究
  7. まとめ

第4部 微生物を利用した発電技術と微生物触媒型燃料電池の開発動向

(2022年8月9日 15:30〜16:40)

 微生物燃料電池は、身近に棲息する微生物を活用することで基礎知識があれば容易に作製できます。また、近年のエレクトロニクスの省エネ化により、小さな発電量である微生物燃料電池の応用展開が拡大しつつあります。一方、微生物燃料電池を使いこなすためには、微生物から電気化学、材料工学、電子工学などの多様な基礎知識と技術も必要となります。  本講座では、微生物燃料電池の発電の原理とその構築法、電極材料、さらには現状の課題について紹介します。また、講師が開発を進めている「泥の電池」の特長と現状について紹介することで、将来の微生物燃料電池の展開についてもふれてみます。

  1. 微生物燃料電池とは?
  2. 微生物燃料電池の原理・仕組み
  3. 微生物燃料電池の電極材料
  4. 微生物燃料電池の現状
  5. 「泥の電池」の現状と将来展開
  6. まとめ

自由参加型フリーディスカッション

(2022年8月9日 16:40〜17:00頃を予定)

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