現在、分子量が約500〜3,000程度の機能性ペプチドを基盤とした中分子創薬の研究開発が世界規模で盛んに展開されています。分子量が約500以下の低分子薬は、細胞膜を通過でき、細胞内分子を標的可能であるが、特異性が比較的に低いことで副作用に繋がる場合が多い。一方で、分子量が約15万程度の抗体を中心とした高分子薬は、受容体等の分子標的性が高く、抗がん剤等として臨床治療で使用され、バイオ医薬品として売上高の上位を占めています。しかし、細胞内の分子を標的化することが困難であり、しかも製造コストが高額になることが問題となっています。中分子薬は、低分子薬、及び、抗体を含む高分子薬の機能性 (特に分子認識) と、化学合成が可能なことから製造コストを顕著に抑えることができ、さらに薬剤構造を工夫することで経口投与も可能になります。しかし中分子薬においても、細胞内移行性に乏しく、また細胞内において細胞膜通過、及び、サイトゾル送達をさらに促進させる技術構築が喫緊に解決すべき大きな課題となっています。
本セミナーでは、機能性ペプチドを中心とした中分子創薬の世界的動向と課題について議論し、特に改善すべき課題である、中分子薬における細胞内導入技術の構築と、その重要性に関して、講演者の研究成果 (膜透過性ペプチドの開発と、ホウ素中性子補足療法やエクソソームを含む細胞分泌小胞への応用等) も含めて最新の知見紹介と、将来の技術応用に関して討論を行います。
- はじめに
- 機能性ペプチドを中心とした中分子創薬
- 低分子、中分子、高分子薬 (抗体) の違い
- 機能性ペプチドを中心とした中分子医薬品の長所と課題
- 構造と機能性
- 中分子創薬の世界動向
- 世界の中分子医薬品市場
- 上市ペプチド医薬品・臨床研究
- ペプチド医薬品の技術区分別の出願動向
- 特許からみた中分子医薬の開発状況
- 中分子創薬の課題
- 中分子創薬における細胞内導入技術の重要性
- 膜透過性ペプチドの種類と性質
- 膜透過性ペプチドの細胞内移行機序
- 環状ペプチドの膜透過性と生理活性 (膜透過性配列を有する環状ペプチドの例)
- 薬物送達 (DDS) 技術としての応用例
- ホウ素中性子捕捉療法における機能性ペプチドの応用
- 細胞分泌小胞エクソソームを基盤としたDDS技術の開発と機能性ペプチドの応用
- DDS技術開発に役立つBioconjugate chemistry
- 将来展望
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