1年前に起こった東日本大震災を契機として、日本全体の電力不足が深刻化する中、国際エネルギー情勢は大きく変貌している。 2009年までにはまったく考えられなかった100年に1度といえるエネルギー革命が2010年から米国を震源地として世界で起こっている。 それは、米国におけるシェール・ガスをはじめとした非在来型天然ガスの劇的な生産コストの低下による天然ガス生産増と、天然ガス価格の暴落である。 21世紀は環境の世紀と呼ばれ、天然ガス需要は急増の一途を辿り、天然ガス価格は百万Btu (ブリティッシュ熱量単位) 当たり20ドルを突破すると考えられてきた。 ところが、多くのエネルギー専門家の予想に反して、思いがけない米国の天然ガス生産増によって、天然ガス価格は2009年9月には2.4ドルまで暴落し、福島第一原子力発電所事故により世界的に天然ガス火力発電需要が増加している2012年3月においても2ドルまで下落している。 これは、チェサピークをはじめとした米国の中堅石油企業による既存技術の組み合わせによる革命的ともいえる、非在来型天然ガスの生産コストの低減に起因する。 そして、シェール・ガス革命は、非在来型石油であるシェール・オイルの分野にも拡大しつつある。 米国の原油生産量は1970年をピークに減少を続けてきた。 しかし、シェール・オイルの開発により、米国国内の原油生産量は2008年を底に大幅に増加している。 石油は天然ガスと比較して、エネルギーとしての輸送、貯蔵が簡単であるうえに、輸送用燃料、石油化学用原料としての用途が格段に広く、シェール・オイルが国際エネルギー市場に与える影響は極めて大きい。 しかし、2012年5月には日本にある54基すべての原子力発電所が停止する電力不足の状況において、日本はLNG (液化天然ガス) を百万Btu当たり2011年12月には18ドルという高値で購入している。 まさにエネルギーの世界における革命ともいえる、シェール・ガス、シェール・オイルの開発状況の最新動向と、シェール・ガスは日本のエネルギー問題の解決となり、電気料金の引き下げにつながるのか。 今後の世界のエネルギー動向に係わる日本企業にとってのビジネス・チャンスについて詳細に分析する。