蓄電デバイスとして広く利用されているリチウムイオン電池は、既にその理論限界のエネルギー密度に迫っており、そのエネルギー密度は300 Wh/kg程度が限界と推測されている。そのため、リチウムイオン電池よりも高いエネルギー密度を可実現する次世代蓄電池に関する研究が近年盛んである。リチウム空気電池は、高い還元力を有する金属リチウムと、大気中の酸素を活物質として利用するため、リチウムイオン電池の2~5倍以上のエネルギー密度を実現することが可能であり、次世代蓄電池の最有力候補である。実際に、500 Wh/kgを超えるセルも既に実証されており、リチウム空気電池の有する高いエネルギー密度の潜在能力は非常に魅力的である。また、リチウム空気電池は、正極の多孔性カーボン電極、セパレータ、電解液、負極の金属リチウムを積層した単純な構造である点や、貴金属などを用いずに安価な材料で構成される点も次世代蓄電池として有望な理由として挙げられる。一方で、サイクル数、パワー密度は、現行のリチウムイオン電池に比べて低い性能にとどまっており、電池性能を向上させるための材料開発が急務である。
本講演では、次世代蓄電池開発状況について紹介した上で、リチウム空気電池の二次電池化に向けた課題、および、その解決方策に関する取り組みついて概説する。
- 次世代蓄電池の開発動向
- 高エネルギー密度蓄電池の研究開発動向
- 実用的なセル設計の視点に基づいた評価の必要性
- 各次世代蓄電池の特徴と現状
- リチウム空気二次電池の研究開発動向:酸素正極
- リチウム空気二次電池の構成と動作原理
- リチウム空気二次電池酸素正極の課題とその解決方策
- Li2O2の溶解性
- 溶解性触媒
- Li2O2の電子伝導性
- リチウム空気二次電池の研究開発動向:金属リチウム負極
- 金属リチウム負極開発の歴史
- リチウム空気二次電池特有の課題とその解決方策
- 大気成分混入の影響
- 正極反応物とのクロスオーバーの影響
- 体積変化を緩和する3次元マトリックス材料
- マテリアルズインフォマティクス (MI) を活用した新規電池材料探索
- MIを活用した電池材料開発の現状と課題
- 「実験自動ロボット+機械学習」による電解質探索
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