固体表面に塗布した液体を固化して皮膜を形成するプロセスはコーティングや印刷など様々な分野で応用されていますが、本セミナーではその中で樹脂に化学反応を起こさせて硬化させる技術を対象とします。
この硬化過程は、有限の大きさの分子から分子量が無限大とみなせる三次元網目構造が形成される架橋反応です。一方、現象論的に見ると液体から固体への変化であり、その過程で系の粘弾性的性質は劇的に変化します。三次元網目構造が形成される架橋硬化過程における構造変化と粘弾性的物性変化との関係を分子論に基づいて説明します。続いて、ケーススタディとしてUVインクと熱硬化性塗料を例に挙げ、三次元網目構造の形成とレオロジーとの関係を工業技術という観点から説明します。
- はじめに (塗膜の固化プロセスに関する概要)
- ゲル化過程のレオロジー
- ひずみとひずみ速度
- 粘弾性の現象論 (応力緩和、遅延弾性)
- 動的粘弾性の基礎
- 粘性液体から弾性固体へのレオロジー的性質の変化
- 重合硬化に伴う動的粘弾性の変化とゲル化点 (ゲル化点をどのように決めるか)
- ゲル化点における分子構造の特徴 (パーコレーション理論とフラクタル構造)
- 三次元網目構造とゴム弾性
- 硬化反応と温度
- 高分子の分子運動とレオロジー
- ガラス転移温度
- 時間 – 温度換算則
- 硬化反応の速度論と温度の効果 (硬化はどこまで進むか)
- UVインキの硬化と粘度挙動 (UVの吸収散乱と硬化)
- 粘度測定による感度評価
- 吸光性の大きい顔料を分散したインキ
- 白色顔料を分散したインキ
- UV硬化によるパターン形成とパラメータ特許
- UV硬化と相分離
- 不均一構造の特徴
- 昇温過程における架橋硬化とレオロジー
- 熱硬化性塗料の昇温過程における粘弾性挙動
- 昇温硬化過程における粘度挙動と塗膜の平滑性 (レベリングとたれ)
- 昇温硬化過程における粘弾性挙動の解析 (スケーリング則の適用)