医薬ライセンスにおいてデューデリジェンスは化合物評価の一環としてライセンスの可否を最終的に決める重要な作業ですが、十分に問題点を洗い出すことができず、事後に大きな問題を引き起こした例もあります。実効的なデューデリジェンスを実施することは難しく、とりわけ最近、増加している開発初期化合物や創薬基盤技術のライセンスでは不確定要因が多く、デューデリジェンスでの検証も大変難しくなっています。
また、時間が限られるためにライセンス交渉における主要協議事項に絞って実施されることが多く、その結果、所期のライセンスポリシーが達成されるかどうかの確認がおろそかになるケースや、それぞれの専門部門の担当者が直接、先方の施設を訪問する貴重な機会であるにもかかわらず、担当者同士が直接話し合う時間を十分に取れないケースも多いと思います。
ライセンス交渉の終盤で実施されることも多いため、ライセンス条件の見直しが必要になるようなケースではそれまで前向きに交渉を進めてきたライセンス担当者の不評を買うこともあると思います。そのために担当者には高い専門性が求められるようになってきて、専門担当者の育成が課題になっています。
ここではまず導入側企業の立場から、デューデリジェンスの一般的な内容や進め方を紹介し、その留意点について概説します。また、化合物評価では不確定要因への対応や評価基準の数値化、重みづけについて概説します。
ところで、オープンイノベーション時代を迎えて、ライセンス交渉では収益配分の協議よりもプロジェクトの価値に関する協議が重視されるようになっています。また、コロナ禍の下で意思決定の一層のスピードアップ化も進んでいますので、この点についても紹介したいと思います。
- 医薬ライセンスにおけるデューデリジェンス
- デューデリジェンスとは
- 一般的な査察項目
- ライセンスポリシーと研究開発ポリシー
- ライセンス交渉における主要協議事項
- 開発データパッケージ
- 製薬・製造設備と施設
- デューデリジェンス実施プロセス
- デューデリジェンスの流れ
- 適切な実施時期
- 主な査察対象資料と担当部門
- 各担当部門の準備作業
- 事前ミーティングと事後ミーティング
- 信頼関係構築
- 失敗事例
- デューデリジェンスの留意点
- 実施上の課題
- 化合物評価の問題点
- 担当者の責任の範囲
- 実施後の共同責任
- 専門担当者育成の必要性
- 収益性評価の留意点
- 収益性評価とその課題
- 不確定要因と数値化
- 重みづけ
- オープンイノベーション時代のデューデリジェンス
- Proof of Research Concept (PORC) のデューデリジェンス
- これまでの医薬ライセンスの枠組みの限界
- 新しい医薬ライセンスの試み
- プロジェクト価値の重要性
- 意思決定のスピードアップ化
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