スクリーン印刷は、エレクトロニクスやグラフィック・加飾印刷などの多くの分野で60年以上の長きにわたり利用されてきたにも関わらず、未だに管理が困難で職人技が必要な印刷工法だと思われています。
孔版であるスクリーン版を利用するスクリーン印刷は、画線部の開口部からインキを一定量で均一な厚みで転移できる為、原理的に、最も安定した印刷工法です。スクリーン印刷プロセスそのものが管理困難だったのではないのです。間違っていたのは、適正化されていないインキやスクリーン版を使用していたからです。今こそ、これまでの考え方を捨て、これまでの対処療法的な手法が間違っていたと認識を新たにすべきです。
スクリーン印刷にも実践的な理論があります。印刷されるインキ、ペーストの身になってプロセスを考える「ペーストプロセス理論」です。この理論は、私が長年にわたり仮説と検証を繰り返し実用性がある考え方として確立し、多くのコンサルティングの印刷現場で実証を行なってきたものです。この考え方は、エレクトロニクス分野のみならず、グラフィック、加飾、捺染、工業印刷などでの高品質スクリーン印刷実践のためであれば、すべてに通用します。
スクリーン印刷に対するこれまでの先入観を捨て、論理的整合性の観点からこの考え方を評価いただければ、この理論の正しさを納得していただけると思います。これまでの対策での成功の理由も失敗の理由もこの理論で説明ができるようになります。この理論を正しく実践すれば、スクリーン印刷は、これからの技術的伸び代が最も大きい有用なプロセス技術であることがご理解いただけると思います。
印刷プロセスの適正化とは、スクリーン印刷の本来の「あるべき姿」を達成するための各種の「前提条件」を適正化することであり、適正化できていない場合は、その理由、原因を見つけ出し、適切に対策することです。「前提条件」が適正であれば、印刷品質と印刷安定性は、インキ・ペーストの有する固有の印刷性能で決定されます。
全ての印刷工法は、先ず「刷版」の性能が向上し、それに合わせた印刷性の高いインキが開発され、それぞれの印刷品質を向上させてきました。このことはスクリーン印刷においても同様であり、「刷版」であるスクリーン版の主要素であるメッシュ材料の技術進歩により、使用できるインキの印刷性能をさらに向上させることができました。
本講演では、最初に、スクリーン印刷の原理やメカニズムの解説し、最近、明らかになった「版離れ角度」と「版離れ力」との相関について説明します。そして、スキージやスクリーンメッシュなどの要素技術の「標準」について解説し、印刷性能に影響するインキ・ペーストの揮発性、濡れ性や粘弾性特性について説明し、さらに、これまで、スクリーン印刷の大きな課題であったベタ印刷での「サドル」の解消や「トーンジャンプ」のないグラデーション印刷、そして、最新のエレクトロニクス分野での具体的な応用例と実践方法について紹介します。
- スクリーン印刷とは?
- 原理的には、スクリーン印刷は最も安定な印刷工法
- 版とインキを適正化すれば30μmラインも手刷りができる
- 適正化できなかった最大の要因はインキの印刷性能不足と適正化していない版仕様
- 各種印刷工法の種類とインキの粘度範囲
- 各分野のスクリーン印刷でのインキの粘弾性は、適正化されているか?
- スクリーン印刷は「特殊印刷」、だから印刷安定性が高い
- 現状のスクリーン印刷の多くは「技術限界」の50%以下のレベル?
- 「ペーストプロセス理論」の考え方の基本
- 印刷条件のほとんどは、適正化可能な「前提条件」
- スクリーン版の反発力での「版離れ」の重要性
- 「オフコンタクト印刷」と「コンタクト印刷」の大きな違い
- 「コンタクト印刷」の「版離れ」、本当は、時間差の「版剥がし」?
- ≪最新技術≫メタルマスクでの「同期版離れコンタクト印刷工法」
- メタルマスクでの低粘度インキの定量塗布技術
- スクリーン印刷の4つのカニズムの理解
- 「ローリング」のメカニズム
- 「充てん・掻き取り」のメカニズム
- 「版離れ」のメカニズム
- 「レベリング」のメカニズム
- ≪最新技術≫スクリーン印刷の宿命?:「版離れ」遅れ不具合の解決策
- 印刷後半での版離れ遅れ悪化の原因は「版離れ角度」
- 通常ピールオフ動作での実質クリアランス量増加と「版離れ角度」の変化
- 等クリアランス+「版離れ角度」維持動作で、「版離れ力」を1.5倍
- スキージとスクリーン印刷装置
- 印刷機の種類とスクリーン版
- フラットベッド、シリンダー、ロータリー印刷機と刷版
- 印刷位置合わせの方法
- スキージが最も重要な印刷パラメータの要素
- 最適なスキージの選択方法・斜め研磨スキージの効果
- スキージのエッジの面取り仕上げの重要性
- 4つの印刷条件の適正化
- 4つの印刷条件と印刷品質への影響
- スキージ印圧設定方法「押し込み」方式と「エアー圧」方式
- 「適正印圧」の定義 印刷膜厚均一性
- スキージ角度、速度と「充てん力」との相関
- スクリーン版とスクリーンメッシュ
- ステンレスメッシュ開発の歴史とスクリーン印刷技術の進歩
- スクリーンメッシュの「弾性変形」比例限度と適正クリアランス
- スクリーンメッシュ開口率とインキの吐出性
- 超高強度ステンレスメッシュでの課題解決「無変形スクリーン版」
- スクリーン版の製作工程 密着露光とミスト現像
- スクリーン版の洗浄方法
- スクリーン版の高品質再製版システムの実際例
- インキ・ペーストの印刷性能
- インキの分散安定性、溶剤揮発性および濡れ性の影響
- 連続印刷中のインキの含有溶剤揮発と印刷膜厚変化
- インキの粘性と弾性の理解「粘弾性マップ」の利用の仕方
- ≪最新技術≫ベタ印刷での「サドル」の解消策
- ライン幅違い、ベタパターンでの印刷膜厚決定メカニズムの違い
- スクリーン印刷の宿命とされていた「サドル」
- 「サドル」無しベタ印刷の実現方法
- ≪最新技術≫「トーンジャンプ」のないグラデーション印刷
- なぜ、スクリーン印刷でグラデーション印刷が困難か
- 「トーンジャンプ」が発生する原因
- 原理的に「トーンジャンプ」が発生しない網点
- 高品質スクリーン印刷プロセス実践のための具体的な対策手法
- 印刷均一性を阻害する要因とその対策手法
- 印刷寸法精度を損なう要因とその対策
- スクリーン印刷におけるその他の不具合対策
- 乾燥のメカニズムとその重要性 静電気とインキの糸引き対策
- スクリーン印刷8つの適用工法と高品質スクリーン印刷の応用例
- 適用工法
- べた
- ファイン
- ドット
- スルーホール
- ビア埋め
- 落とし込み
- 積層印刷
- 転写印刷
- 高品質スクリーン印刷の応用例
- スピンドル柄
- プリンテッドエレクトロニクス
- ナノ銀インキ 等
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