自動車内装表皮材には塩化ビニル樹脂に可塑剤を混ぜた軟質塩ビが用いられてきた。可塑剤にはアレルギー物質として懸念されているオルトフタル酸エステル (Ortho Phtalate) が主に用いられてきたが、最近では他の可塑剤に代替えが進んでいる。また本革もアニマルフリー化の流れで減少していたが、2050年カーボンニュートラル対応として軟質塩ビや本革が復活しつつあるため、今回は詳細に解説する。
インストルメントパネル (インパネ) やドアトリムの構造は、操作がタッチパネル化されたため簡素な形状 (=安価) に変化している。パウダースラッシュ成形等複雑な形状を表現する成形工法が減少している。インパネの現状と未来を解説する。自動車はモーター駆動化とタッチパネル化で安価になっている。シートカバー用途にはシリコーン系、ポリエステル (TPC) 系等のレザーが新しく登場しているので紹介する。
今後カーシェアリング対応 (個人の所有物ではなくなる) として豪華な部品より、軽くて安価で防汚性や抗菌・抗ウイルス性機能を持った部品が要求される。今回は日本の技術がまだ独壇場の抗菌・抗ウイルス性技術も紹介する。
本講座では最新情報をもとにトレンドを明確にして、今後自動車内装材がどのような変化をしていくのかを考察する。
- はじめに
- 最新情報をもとに自動車の未来を考える:中国ローカル車が既に世界標準
- 人や環境への配慮:VOC (ボラタルオーガニックコンパウンズ) ・SVOC (セミボラタルオーガニックコンパウンズ) の低減、臭いの低減、軽量化、本革や塩ビの復活
- 自動車内装材に用いられる主なプラスチック
- 塩化ビニル系
- オレフィン系
- TPV
- p-TPV
- r-TPO
- POE
- PP
- PE等
- ウレタン系
- スチレン系 (SEBS等)
- 自動車内装材部位別動向
- 自動車 (OEM) ・部品メーカー (Tier1) の動向
- 内装表皮材メーカー (Tier2) の動向
- 質感と価格と成形工法の現状
- 射出成形
- インモールドグレイニング (IMG)
- その他工法
- インストルメントパネル・ドアトリム
- TPO表皮材
- 工程概要
- 配合 (安定剤処方等)
- フィルム成形 (押出機、カレンダー成形)
- 表面活性化処理 (コロナ、プラズマ)
- 表面処理 (表面処理剤と処理機の選定/水性化)
- 絞押 (本革調の緻密な外観)
- TPOへの電子線照射技術
- 電子線架橋ポリプロピレン発泡体製造技術
- ハンドラップ用レザー
- 座席表皮 (シートカバー)
- 本革:クロム問題・臭い・重いが、しかし化石炭素フリー (Fossil carbon free)
- 塩ビ
- ウレタン
- ウレタンレザーの動向
- 合成皮革 (スキン層有り)
- 溶剤タイプコーティング法 – ハイソリッドタイプによる工程削減
- 水性タイプコーティング法 – 発泡層の形成方法
- ホットメルトコーティング法 – 発泡層の形成方法
- 人工皮革 (スキン層無し:スェード) – 環境に優しいマイクロファイバー
- 難燃化技術 : ハロゲン・アンチモンフリー
- ポリエステル、シリコーン系レザーの動向:耐エタノール性 (消毒薬) がウレタンより良い
- 座席クッション:洗濯可能な素材
- 天井材:吸音機能
- 加飾材:動く・光るがトレンドだったが今後減少:コスト、エネルギーの無駄
【補足】自動車外装材
- カーボンニュートラルのための塗装レス:フィルムラッピング+機能
- チッピング (傷付き) 防止フィルム:自己修復性
これから
- CASE (ケース:Connected・Autonomous・Shared&Service・Electric) やMaaS (マース:Mobility as a Service) の普及により自動車内装材への防汚性、抗菌・抗ウイルス性の付与
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