本セミナーでは、現在の中国が目指している水素社会の全体像を紹介した上で、中国における主要な水素調達源、貯蔵・輸送方法、供給先に関する産業動向・企業動向を説明し、課題に関する将来の展望について解説いたします。
中国では国策である低炭素社会の推進が進む中、水素・燃料電池産業の急速な成長がみられている。2021年上半期において中国における燃料電池車保有台数は約8000台、稼働中の水素ステーションは150箇所に達するなど、中国の水素燃料電池産業は世界においても存在感を強めている。また最近では港湾都市におけるFCフォークリフトや、工場や商業施設向けの熱電コジェネシステムなど定置用燃料電池もデモプロジェクトを通じた導入が見られている。交通分野だけでなく、工業分野、住居分野などあらゆるエネルギー需要において水素エネルギーを推進する、いわゆる水素産業パークも近年全国主要都市で出現している。 このように中国の水素燃料電池産業は拡大を続け、新たな事業投資を呼び込み、国を挙げての一大産業に発展することが期待されている。これまでスタック、膜電極などの燃料電池の基幹技術・材料はこれまで海外に依存していたが、政府補助政策などの指導政策により、革新技術・材料の国産化が推進され、近年の中国国産製品の台頭は目覚ましく進展している。 こうした中国企業の技術力は一体どのレベルまで到達しているのか?現在燃料電池の技術力で世界をリードすると言われる日本企業にとって脅威となるところまで来ているのだろうか?その場合、日本企業にとっての参入領域はどこにあるのか、どのようなビジネス手法が必要になるか、またその課題は何か。本講演は現在の中国水素燃料電池産業の全体像を紹介し、水素燃料電池に関する政府政策、市場開発動向及び中国技術・製品の技術レベルを説明し、上記の問題に対する演者の考えを述べる。