新型コロナウイルスの再拡大が収まらない中で、脱炭素の動きは極めて活発化している。グローバルに見れば、発電のCO2削減や、再生可能エネルギーの導入などが根本的な問題解決であろうが、自動車のEV化が突出した形で進行している。各国ともに、ガソリン自動車 (乗用) の製造中止を、2030年あるいは2035年に置いて、EVなどの製造を進めている。
EV化が本質的な問題解決になるか否かは、かなり議論があるが、上記の2030年〜2035年時点では、2、000GWhをわずかに下回る量のリチウムイオン電池が必要となる。2020年時点での主要国の総GWh数は240~300GWhと推定されるので、なんと10年足らずで巨大な電池生産を構築することになる。
上記の電池生産には、コスト、性能と何よりも安全性のクリアが求められる。左記の問題が幸いにも解決したとして、最後に残るのは大量の廃電池の、処理と資源リサイクルの負担である。正極材を中心とする有価元素、Co、NiとLiのリサイクル、3R/4R無しには、千桁GWhの電池生産は成り立たない。
本ウェビナーにおいては、上記の問題意識をベースに、不明点の多い3R/4Rの課題に可能な限り定量的に数字で考えてみたい。
本ウェビナーでは、2021年6月にシーエムシー・リサーチより発行した成書「EV用リチウムイオン電池のリユース・リサイクル2021 ~特性、規格、安全性とビジネス動向~」の第3章~第5章 (第3章:講義1、第4章:講義2、第5章:講義3) を中心に講義するが、それ以外の章も適宜参照して解説する。
- 講義1: 電池の法規制、規格、認証と安全性試験
- リチウムイオン電池 (新品/中古/廃棄) の生産・販売・応用は性能、寿命、コストと安全性の全てが同時に満たされて可能となる。ここでは左記の事項の中で最も“厄介な”、安全性/危険性について、JIS/UL/UN、EV電池システムの試験規格を紹介する。左記の事項と廃電池のリユース、リサイクルなどとの関連は、明確でないケースが多いが併せて考察したい。
- 安全性、リスクとハザード
- 安全性試験と要求事項
- JIS規格と電気用品安全法
- EVなど自動車用電池とシステムの安全性規格
- UN国連輸送安全勧告と電池輸送
- バーゼル法と廃電池の国際移動
- UL規格と製品認証
- 廃電池処理プロセスと安全性
- 講義2: 電池のリユース、リサイクルと開発事例
- ここでは本書の主題であるリユース、リサイクル (R&R) に関する国内外の法令やガイドラインを扱う。法律やガイドラインで決めれば、R&Rが直ちに進行するものではないことは言うまでもない。当分は実態と併せた合理的な運用を模索することになろう。関係各者のR&Rに関する開発事例も豊富になって来ているので、時系列で一覧して紹介する。
- 資源有効利用促進法 (3R) ほか関係法令
- EU指令 (RoHS、WEEE、電池指令とREACH)
- 廃棄とリサイクルに関する表示 (マーキング)
- 各社の開発事例、2019年〜2021年
- 講義3: 廃電池のリサイクル、元素資源と正極材合成のリンク
- ここでは本書の主要な技術内容である、元素資源リサイクルの問題を扱う。
- 廃EV電池の発生経路と発生量試算
- 正極材の組成と合成 (前駆体と化学プロセス)
- 正極材合成と元素資源のリサイクル循環
- 電池GWhあたりの元素資源量 (NCMCxyz)
- 廃電池の放電処理の実例
- 正極材の組成と電池の関係
- 電池を構成する材料と部材 (重量と体積)
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