日本の医療用医薬品の原料・原薬 (原材料) 等の調達の多くは海外特に中国やインドに依存しているのが現状であるが、近年の自然災害や相次ぐ環境破壊の広がり、更には新型コロナウイルス感染症拡大にともなう工場停止や人の往来の大幅な制限などによる国際物流網の寸断により、日本のサプライチェーンの脆弱性が将来にわたりより顕在化している。この原因の一つに、原料や原薬など比較的廉価な生産拠点を求めて、これまで海外にその拠点が集中化されて来たことがあげられる。他方この問題の解決策として生産拠点の国内回帰があるが、内製化 (自社製造) に伴う原料・原薬製造のコストアップなど一筋縄ではいかない面もある。そのため従来の海外ルートからの医薬品原材料確保をそれらの内製化と共存させつつ、一層の品質確保とより適正かつ効率化したサプライヤー管理が強く求められるところである。
一方、医薬品やその原材料のサプライチェーンは、近年のPIC/S GMPやICHによる品質規制に伴い、非常に広範囲な対象と領域に拡大し、そのための技術移転やCMO (製造受託事業) 管理が不可欠な要素としてその益々重要度を増している。昨今の医薬品業界をみても、医薬品原材料の適正な管理なくしては。市場へ製品供給不可、製品欠品という深刻な事態をも招くことにもなりかねない。「医薬品原料・原薬の品質管理・サプライヤー管理」を実践する上で、2021年8月1日公布GMP省令改正の留意点も踏まえながら、事例を交え解説する。
- 医薬品原材料調達を取巻く問題点と実践対応
- 生産拠点海外依存からの脱却と問題点
- 原料調達ルート、海外調達と国内自製の分岐点 (事例紹介)
- 目的及び内容
- 海外依存度の高い原料・材料の供給途絶リスク解消のための生産拠点整備
- 設備機械事業の先端化
- 生産拠点の一国集中からの回避
- サプライチェーン強靭化
- 海外ルートからの原料・原薬の活用と品質確保について
- GMP省令改正 (R3年8月1日) における「供給者管理」の重要性
- 医薬品原材料の品質管理と製造委託先・サプライヤー管理の実践ポイント
- CMO/供給者管理・原料調達過程における選定評価と契約のポイント
- はじめに
- CMOの増加と背景及びCMO管理の留意点
- 適切なサプライヤー (供給者) 管理及び外部試験検査管理の留意点
- 委託先・CMO/サプライヤーの選定評価, 契約
- 技術移転から安定生産までに留意すべきこと
- 委託先・CMO/供給者 (製造業者及び原材料供給業者) との品質取決めとGDP
- 原料調達における供給者管理・契約上の留意点
(製品欠品を起こさないための適切な原材料管理)
- 原料 (出発物質、原薬、添加剤) 供給者管理における手順書、製品標準書
- 委託先・原料調達における訪問調査 (実地調査) の実施例
- 製造業者 – 原薬製造業者 – 輸入業者3者間の品質取決め
(和英対応取決めの雛形)
- GMP基準を踏まえた、受け入れ試験およびサンプリングの手法
- サプライヤー管理における受け入れ試験およびサンプリング
- 原則および採取する職員
- 出発原料のサンプリング:√n + 1、サンプリング数の削減、JIS抜取試験
- CMO/サプライヤーの品質管理・監査のポイント
- CMO/サプライヤー監査とは
- CMO監査とサプライヤー監査の違い及び、供給者選定における監査の位置と比重
- 供給者に求められる品質保証と監査のタイミング
- 委託・納入先との適正な品質保証システムとは
(供給業者との契約、及び第三者監査体制も含めて)
- 監査手順、新規CMO/サプライヤーと認定評価済CMO/サプライヤー
- 評価の留意点と重要ポイント (技術移管、遵守事項)
- チェックリストによる詳細確認事項の具体例
- 海外供給業者への監査手順と評価法
- 包装、製剤、API、原料中間体、資材容被製造施設、及び試験施設における実施例
- サプライヤー管理の要件と今後の課題
- GMP省令改正 (R3 年8月1日公布) における供給者管理とは
- FDA査察指摘トレンドと課題
- 医薬品品質システム (PQS) 及び品質リスクマネジメント (QRM) の活用
- ICH Qトリオ及びQ12による継続的な品質改善と得られる成果
- CMO/サプライヤー管理におけるリスクマネジメントの活用
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