名古屋市工業研究所の小玉秀男氏による光造形法の発明を契機に、各種三次元積層造形法 (Additive Manufacturing法: AM=3Dプリンティング) が発明されて実用化されてきた。今日、それぞれの発明から20年以上経過したことにより基本特許の権利が消滅し、転機が訪れ大きなブームとなった。材料押し出し方式の安価な装置が大量に出荷されるに至り、3Dプリンターが極めて身近なものとなっている。
そして、世界各地で従来と違った3Dプリンターを中核に据えた「新しいものづくり」がDX (Digital Transformation) の発展と共に突き進みつつあり、まさに、今までの大量生産=安価という図式から、3Dプリンターを利用したものづくり、少量生産=高付加価値、そしてデジタルデータにもとずく最終製品の製造という観点からその取り組みが大きく動いている。
このような状況からその材料開発に拍車が掛かっているが、まだ顧客のニーズを満たすほどにはそのプリント出力物 (材料) の性能は到達していないことから材料性能の重要性がより叫ばれ、更なる進化が求められている。
このことは材料開発には大きなビジネスチャンスがあることを示しており、欧州では、化学系大会社を中心に材料開発に多額の投資が行われつつある。ものづくりで世界において行かれないためにも、重要な核となる機能性材料の多くを担っている日本企業の材料開発に期待したい。
世界は新しい流れの中、最近は特に、インクジェット方式を核とした新しい高速焼結法 (HSS) や金属造形法が次々に開発され最終製品に向けて利用が進んでいる。
更に、熱可塑性樹脂の造形では高性能で付加価値の高いPEEKなどのスーパーエンジニアリングプラスチックへ関心が高い。また、セラミックの3Dプリンティング開発も進んでおり、セラミック製品の製造で日本の地位を保つためにも大いに注視していく必要がある。
本講演では特に3Dプリンティングへの取り組みについて、大半を占める樹脂材料を中心に、金属材料や無機材料を含めて材料の視点から、その現状を把握するとともに、課題を整理して、ビジネスチャンスにつなげる開発視点および今後の方向性を探ることとする。
- はじめに
- 3Dプリンターの基礎
- 3Dプリンターでなにができるか?
- 3Dプリンターの歴史とその基本特許
- 3Dプリンター材料の特許状況
- 3Dプリンターおよびその材料市場
- 3Dプリンターとその材料
– 各積層方式とその材料の求められる特性、現状とその課題 -
- 液槽光重合法 (VPP) とその光硬化性樹脂
- 材料噴射法 (MJT) とその材料
- 材料押出し法 (MEX) とその材料
- 粉末床溶融結合法 (PBF) とその材料
- 結合剤噴射法 (BJT) とその材料
- その他の造形法とその材料
- いま注目されている造形法とその展開について
- 新しい造形法
- セラミック造形
- 医療・歯科への展開
- バイオ3Dプリンティング
- その他
- 国内外の装置メーカー、材料メーカーの動向
- 2020年、2021年はコロナ禍のため国内外の3Dプリンティング関連展示会は殆ど中止に、一部はオンライン開催になっている。
そのため、各種3Dプリンティング関連団体やメーカーの主要なWebinarからその動向を探ることとする。
- 3Dプリンティングによる最終製品製造とその課題
- 材料から見た3Dプリンターの市場動向と今後の行方
- まとめ
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