cGMPに「医薬品の製造装置は、製品の安全性、本質、力価、品質または純度を劣化させるような汚染を防止するため、適切に洗浄されたければならない。」とある。ICH Q7 12章にも、「共用設備の品目切り替え時には完全に洗浄すること、専用設備であっても望ましくない物質や微生物汚染を防ぐため、適切なインターバルで洗浄するべきこと。」と医薬品設備洗浄の基本的な考え方が示されている。2021年8月に改正GMP省令が改正されその中で「交叉汚染防止規定」が日本のGMPで初めて新設されたが、洗浄バリデーションはGMP3原則の一つである「交叉汚染防止」を達成するための最も有力な手法である。
洗浄バリデーションでは、適切な洗浄手順を構築するすることはもとより洗浄後残留物許容基準値を、安全性の上から論理的且つ科学的な根拠に基づき設定しなければならない。また洗浄バリデーションに用いる試験やサンプリング方法も、残留物を確実に検出することのできるよう、特異性及び感度を有する妥当なものでなければならない。
本講演では、医薬品製造における洗浄バリデーションに関する最新の規制動向、改正GMP省令での「交叉汚染防止規定」新設の背景を踏まえながら、EMA、PIC/S GMPに対応した洗浄バリデーションの実施とその残留許容基準値及びDHT、CHTの設定等、更には洗浄バリデーションによる製造設備共用/専用化の判断基準をFDAによる見解を含め解説する。
- 洗浄バリデーションの実施関する法規制について
- 海外の洗浄バリデーションに関わる法規制
- PIC/S GMP Annex 15の改定に対応した洗浄バリデーション
- cGMPにおける洗浄バリデーション
「FDA Guide to Inspections of Validation of Cleaning Processes」
- ICH Q7 (原薬GMPガイドライン) における洗浄バリデーション
- 改正GMP省令 (H25 年8月30日) における洗浄バリデーション
- 改正GMP省令 (R3年8月1日施行) 第8、9条「交叉汚染防止規定」新設とその背景
- EMA及びPIC/S GMPに対応した洗浄バリデーションのリスク管理
- 洗浄工程のリスク管理と交叉汚染のリスクアセスメント
- 残留許容値の設定方法
- 0.1%基準、10ppm基準、目視限度基準 (Eli Lilly社残留基準値の設定根拠)
- PDE (一日暴露許容量) の算出、ICH Q3A, Q3C, 元素不純物Q3D,M7各ガイドラインとの関連
- EMA暴露限界値設定に関するガイドラインとリスクアセスメント
- NOAEL (無毒性量) ,NOEL (無作用量) ,PDE (一日暴露許容値) からの閾値設定
- TTC (毒性学的閾値) 及びOEL (職業暴露限界) 原薬製造工程、製剤包装工程における残留許容限度の算出方法 (事例)
- 洗浄剤の残留許容基準回収率の設定方法
- 手洗浄のバリデーション、洗浄バリデーションで基準外だった場合の対応
- 情報量の少ない治験薬、ケミカルハザード物質の洗浄バリデーション
- 閾値設定が出来ない場合の留意点
- 改正GMP省令案に提示された「設備共用の禁止 (案) 」への考察
- PIC/Sの求めるダーティーホールドタイム (DHT) ・クリーンホールドタイム (CHT) の設定と評価方法
- 洗浄バリデーションにおけるサンプリング及び分析法の留意点
- スワブ法、リンス法と他の方法 (PHなど) の併用
- サンプリング法の妥当性とバリデーション
- 分析法バリデーション及び回収率の評価方法
- 3極GMP 洗浄バリデーション査察指摘事例と対策について
- PMDA
- cGMP (FDA Warning Letter)
- PIC/S (EU) GMP
- ICH Q7 指摘事例と対策
- 洗浄バリデーション関わる手順書 (SOP) 及び報告書作成上の留意点
- 医薬品ライフサイクルにおける洗浄手順の構築
- 高度な封じ込め設備を必要とする高生理活性医薬品の洗浄バリデーションと設備共用・専用化に関する判断基準
- 固形製剤設備の洗浄バリデーション (事例1)
- マルチパーパス製造設備における高生理活性化合物製造時の洗浄バリデーション及び設備共用/専用設備化の可否について
(事例2:FDAへの質問と回答)
- まとめ
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