本セミナーでは、暮らしに溶け込むカーム・ヘルスモニタリング技術・機器、IoTとの融合によるヘルスケア・スマートタウンへの展開まで講師の豊富な研究開発、医療・福祉・リハビリテーション分野への応用実証経験をもとに、ニーズや技術・事業面での課題、今後の展開まで、示唆に富んだ話題を提供いたします。
日本はもとより世界的にも超高齢社会が加速度的に進むなか、十分とは言えないまでも医療体制は「治療型」から「予防型」へとパラダイムシフトが進みつつある。すなわち、セルフ・ヘルスケアの推進と未病の段階での早期発見、さらに慢性疾患を有する長期療養者の健康支援などの推進である。最近のコロナ禍におけるヘルスケアの国民的意識は従来に比べて遥かに高く、普段の生活の中での健康維持・管理の重要性に対する意識向上はコロナショックのお陰と言っても過言ではないであろう。セルフ・ヘルスケアのためには、自身の基本的な生理量 (変化) を知っておくことが必要であり、できる限り簡便で、普段の日常生活に溶け込む生体計測技術の導入が望ましく、逆にそのような技術は医療の場においても有用性は高い。 本セミナーでは、自己紹介を兼ねてこれまでの研究活動を概観し、併せてヘルスケアに関する現状の社会情勢を皆さんと共に再認識したい。本論に入る前に、初めて生体計測に触れる方もいることを考慮して、先ず生体計測の基本事項を概述する。次いで身体を傷つけない (非侵襲) ことを大前提とした無拘束計測 (ウエアラブル:モバイルヘルス (mHealth) を含む) 、計測されているという意識もなく (無意識) 、計測のための操作もなく (全自動) 、測定者/被測定者の負担もない無負担型生体計測技術、総じて生活に溶け込むカーム・ヘルスモニタリングについて述べる。そして、「健康」を最重要キーワードとして、いくつかの生体情報を取り上げ、その計測原理等を概述しながら、医療・福祉・リハビリテーション分野への応用実証事例について紹介していきたい。 最後に本セミナー全体をまとめると共に、演者が10年以上前から提唱していることであるが、カーム・ヘルスモニター技術とIoT技術を融合・進展させれば、普段の暮らしをしながら街全体が健康・安心をサポートするIoTヘルスケア・スマートタウンの実現に繋がることを述べたい。