本セミナーでは、洋上風力発電を中心とした国内外における風力発電の市場・開発動向を解説いたします。
新型コロナウイルスのパンデミック (世界的な大流行) は、日本および世界の経済のあり方を変貌させ、感染症の拡大、相次ぐ暴風雨の発生も相まって、気候変動対策としての脱炭酸ガス政策へと、欧州諸国のみならず、米国のバイデン政権、日本の菅政権も舵を切っている。先進国、途上国を問わず、脱化石燃料の切り札として再生可能エネルギーの拡大に力を入れ、従来の陸上風力発電に加えて、洋上風力発電の重要性が、世界的に一段と強まっている。風力発電は、もともと開発の歴史が長く、技術革新、機器の大型化、量産効果により、発電コストが低下している。世界的に発電コストは、平均1キロワット時当り8.8円程度とグリッド・パリティーとなっている。風況の良い場所においては、大量の発電を行うことが可能であり、2019年末時点において、世界全体で6億5,100万キロワットに達する風力発電設備が稼働し、米国カリフォルニア州をはじめとした大規模風力発電所 (ウィンド・ファーム) は、100万キロワットを超えるものが誕生している。風力発電は、ライフ・サイクルで見た炭酸ガス排出量が少なく、独立した分散型電源として、離島、過疎地の電源としても利用が可能であり、夜間にも発電できる。既に、国土面積が広い中国、米国等においては、風力発電の普及が進み、今後は、日本のみならず、電力需要の伸びが著しい台湾をはじめとしたアジア、アフリカ等における風力発電の普及が見込まれている。風力発電に関しては、発電量の増加、発電コストの低下を目指して、機器の大型化が行われており、洋上風車の直径は200メートルを超え、1基当たりの発電量も1万キロワット超のものが開発されている。日本は、世界第6位の排他的経済水域 (EEZ) を誇り、洋上風力発電の今後の発展が期待されている。日本は、2040年には7,000万キロワット近い風力発電の導入が見込まれ、そのうち半分は洋上風力発電が予測されている。2020年12月25日に、日本は、グリーン成長戦略を掲げ、2030年までに1,000万キロワット、2040年までに浮体式を含めて3,000万キロワット~4,500万キロワットの洋上風力発電を整備する目標を明確にした。しかし、デンマーク沖合いと異なり、日本の場合には遠浅の海域が少なく、今後は着床式から、浮体式洋上風力発電の技術開発が期待され、2018年12月には、洋上風力促進法 (再エネ海域利用法) が成立し、最長30年間、海域を利用できる規制緩和が行われ、洋上風力発電建設用のSEP船の建造も行われている。2019年8月には、秋田県をはじめとして、4ヵ所の洋上風力発電の有望区域を経済産業省が選定し、2020年7月には、新たに4海域を加えた。戸田建設、東京電力ホールディングス等が、実証実験を行っている。長期的にも、日本における2030年までの経済波及効果は、15兆円、9万人の雇用創出が見込まれている。台湾も2030年までに1,000万キロワットの洋上風力発電を計画し、世界の洋上風力発電は、2030年には2億3,400万キロワット、2040年には5億6,200万キロワット、2050年には14億キロワットに達することが見込まれる。2020年11月には、EU (欧州連合) は2050年の洋上風力発電を3億キロワット、陸上風力発電を7億キロワットとする意欲的な目標を表明した。今後も世界的に陸上風力発電・洋上風力発電の拡大が見込まれ、2030年には21億1,000万キロワットと、世界の発電能力の2割を占め、2050年には60億キロワットと、世界の風力発電市場は、200万人を超える雇用を創出すると予測されている。風力発電は、太陽光発電と異なり、風車、軸受け、発電機等の、2万点の部品から構成されるモノづくりの集積であり、風車に用いる炭素繊維をはじめとして、日本企業が素材・部品の強みを持っている。しかし、世界最大の風力発電国は、米国を抜いて中国となり、中国は国内メーカーの育成に力を入れている。中国企業、インド企業の台頭、欧米企業の洋上風力発電事業強化により、風力発電における発電効率向上、価格競争が熾烈となっている。日本は、風力発電事業から撤退する企業もあり、時間がかかる環境アセスメントの規制、立地の制約、漁業権等から、期待されていたほど風力発電の開発が行われていない。しかし、2021年に開催される東京オリンピック後のインフラストラクチャー成長分野の主役として期待がかけられており、陸上風力発電、洋上風力発電が、日本および世界において、どのように成長するのか、日本企業にとっての今後のビジネス・チャンスについて分かりやすく解説する。
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