デリバティブを始めとするファイナンス理論の世界では、確率微分方程式で表現される確率過程モデルが利用されますが、このモデルの十分な理解には、いわゆる確率論についての知識が必要になります。 ここで言う確率論とは、数学的にきちんと定義された確率空間を前提にした確率の議論のことですが、その議論は、アカデミックな数学的訓練を受けたものでないと理解が難しいものです。とくに最初の確率空間の導入の議論が、イメージすらしづらい極めて分かり難いもので、学習者にとっていきなりハードルの高い部分になっています。 このワークショップは、非常に分かりやすい金融工学の本として世評の高い「マルチンゲール・アプローチ入門 (近代科学社刊) 」の著者の 村上 秀記 氏が担当します。村上氏は、弊社通学制スクール・研究科「金利モデルコース」で、難解な金利モデルの議論を極めて分かりやすく説明してくださると大変好評を得ている方です。 また、長年にわたり、外資系金融機関において、デリバティブのトレーダーを務め、ファイナンスの実務にも精通しています。 ファイナンスを本格的に学ぼうという実務家にとって必要な確率論の知識を、これ以上ないほど分かりやすく学んでいただけるものと思います。 確率論の学習の中でも、特にハードルが高いと思われる、最初の確率空間の導入の部分の議論を、具体例、さまざまな見方、図を駆使した直観的説明等により、受講生の方が「分かった」と思えるように解説いたします。 いわば舞台設定としての確率空間の導入後、その舞台上で活躍する確率変数、確率過程について、数学的に定義を行い、それらについての期待値や可測・独立といった概念について解説していきます。 最後には、ファイナンス理論学習において、決定的に重要でありながら、多くの人にとってほとんど理解不能ともいえる抽象的な条件付期待値について、受講生の方が十分な理解に達するよう、順を追って確率論のポイントを丁寧に押さえていきます。
デリバティブ価格理論の本質は、無裁定を前提とするならば、資産価格をある基準資産で割った値がマルチンゲール (期待値の値が常に現在の値に等しい) になるというものです。実はこの結論からほぼすぐに、デリバティブ価格を求める一般式が出てきます。そしてこの結果をまさに“魔法の杖”のように使って、あらゆる問題が解決されて行きます (=マルチンゲールアプローチ) 。 こういったデリバティブ価格理論の本質は、意外なほど実務家に理解されていません。今回のワークショップでは、世評の高い著書『マルチンゲールアプローチ入門』の著者でもある村上秀記氏が、長年のデリバティブ実務経験を裏付けとして、デリバティブ価格理論の本質を、必要最低限の数学的補足も加えつつ解説致します。ポイントを的確に掴めば、意外なほどデリバティブ価格理論は分かりやすく、そして実務的にも強力・有用な理論であることを改めてご理解いただけると思います。そしてそのポイント (つまりマルチンゲール理論) は高度な数学的知識が無くても、十分に直観的な理解が可能であり、そしていったん理論の使い方さえ修得すれば、種々の問題に対処することができるようになります。デリバティブ価格理論や金利モデルをこれから学ぼうとする人、なかなか勉強が進まない人などは是非ご受講下さい。きっと目が開かれるワークショップとなるはずです。