本講義では確率モデルを用いた画像処理技術について扱います。画像処理とは画像信号から目的とする情報を抽出する信号処理技術であり、画像認識等のより高度なビジョン技術のための前処理としても用いられます。 一般に、信号処理ではノイズや信号内の関係性等の「不確かさ」を扱う必要があります。確率モデルを用いた画像処理技術は画像処理を確率・統計学の枠組みで考えるものであり、「不確かさ」を確率という数理的にも自然な形で扱うことができます。しかしながら、確率モデルによる画像処理の性能は使用する確率モデルに強く依存し、問題にあわせてどのように確率モデルを設計するかという問題のモデリング部分が非常に重要になります。 本講義では、確率的グラフィカルモデルとベイズ統計を用いたモデリング技術を用いた画像処理法について解説します。ノイズ除去や領域分割といった画像処理の基本的問題を題材に、問題に合わせてどのように確率モデルを設計するかというモデリングの考え方や設計された確率モデルからどのように目的の画像処理結果を推定するかについて重点的に解説していきます。重要な部分では実際に Python を用いた実装例についても紹介していく予定です。内容の性質上、数式が多数登場します。 本講義では多変数の微積分や線形代数といった大学初年度の数学的内容を前提として講義を進めていきます。