空気中の水蒸気 (湿気) の物理・化学・生化学現象は、人間の健康、快適性そして産業分野の製品の品質や生産性の向上などに温度制御と並んで重要な役割を果たしている。しかしながら、乾燥空気と水蒸気の混合物である湿り空気の本質や発生する諸現象を体系的に理解している研究・技術者は少ないようである。
一方で、冷房・除湿や暖房・加湿需要を伴う建築物・自動車空間においては快適性や健康訴求が一段と強まりさらに化石燃料利用による環境問題などを勘案した省エネルギーの立場から、特に調湿技術に対する期待が大きくなっている現状がある。すなわち、温度をベースにした熱マネジメント技術以外に湿気をベースとする物質マネジメント技術が省エネルギーや地球環境問題の解決に向けて重要な役割と果たすものと思われる。
改正建築物省エネ法が施行されて、ネット・ゼロ・エネルギー・ビル (ZEB) や住宅 (ZEH) の構築に欠かせない調温技術と同様に調湿技術に対しても新たな展開が期待されている。一方、運輸部門においても、車両の電動化推進から調湿技術による車両内の快適性や安全性 (防曇) の確保を基本として、環境規制対応や経済性の確立が重要視されている。
さらに、産業部門においても、ネット・ゼロ・システム (ZES) の観点から省エネルギーや創エネルギー機器開発に調湿技術の応用が進んでいる。調湿技術は、環境親和型省エネルギー技術に位置づけられる物質マネジメント技術と言える。
本セミナーでは、湿り空気と気候、湿り空気の物理・化学・生化学現象や関係式、空気線図やデジタル化へ向けての関係式、減湿・加湿プロセス、そして既存調湿技術の基礎から新たな調湿材料とそのシステム化技術の展開に関して分かり易く解説して、湿り空気・水蒸気の物質マネジメント技術の将来像を明らかにする。
- 湿り空気制御に向けての社会的動向
- 水分 (水蒸気、水、氷) の地球循環による天候および地球温暖化現象
- 健康と湿度環境
- 建築物や車両そして他産業分野における湿度制御技術に対する社会的期待
- 湿り空気と気象現象そして湿り空気の数量的表現
- 湿り空気中の水蒸気とは
- 水蒸気と微細水滴と気象現象
- 我が国における湿気活用関連の歴史
- 湿り空気の熱力学
- 湿り空気線図と調湿操作
- 湿度センサー
- 湿り空気の物性とその産業分野での利活用
- 湿り空気の物性
- 湿り空気に伴う諸現象
- 空調調和とは
- 各種産業分野での湿気・湿度の利活用
- 減湿・加湿技術の現状とその特長
- 既存調湿技術の原理と特徴
- 各種加湿および除湿機器の開発の現状
- 全熱交換器と調湿
- 透湿膜の原理と等温除湿
- 新たな調湿技術の展開と新規調湿剤の展開
- 潜熱顕熱分離空調における調湿技術の新展開
- デシカント空調と放射冷暖房技術の新展開
- 高効率デシカントシステムの動向
- 新たな調湿剤の開発と展望
- 感温透湿膜
- 高湿導電性高分子
- 調湿用スマートゲル
- 高分子収着剤
- 湿度制御分子ダイオード
- イオン力による凝縮生成
- 調湿着色剤など
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