第1部 知られざる触感デザインの世界
(2021年1月8日 10:00〜11:20)
視覚あるいは聴覚と同様に、触覚でもセンサあるいはディスプレイと言った優れた工業製品を生み出すことは、一つの大きな目標である。ここで、できる限り元の触知覚現象に手を加えることなく、簡単な力学的作用で新たな付加価値を生み出すことに多くの関心が寄せられている。触覚応用のヒントは、研究室内のデザインされた実験環境よりも、身近な触覚の世界に隠れている。特に、ものづくりの現場にヒントが多い。そこには、触知覚に関わる原理が隠れている。触覚の本質は能動触である。皮膚、爪および機械受容器の構造には巧妙な触覚情報処理機構が仕組まれており、その特徴は力学で議論することができる。重要なのは、既成概念を取り払い、一見不可能に思えるが実は可能であるかも知れないと信じることである。
本講演では、いくつかの実例を通じて、知られざる触感デザインの世界を紹介する。
- 触覚技術のパラダイムシフト
- これまでにないものづくり (不可能を可能に)
- 第3の触感製品
- 触覚の増強と触覚コンタクトレンズ (ボディの面歪を瞬時に検知)
- メリヤス編みの軍手による皮膚変形
- 触覚コンタクトレンズ
- 触覚の操作と触覚ネイルチップ (官能評価)
- 爪変形が触覚に与える影響
- 触覚ネイルチップと指先の応力分布
- 触感の生成とソフトフィール硬質面 (内装部品に新たな付加価値)
- 触覚の錯覚
- 剛性 (物理量) とソフト感 (感覚量) を独立設計
- その他
第2部 触感デザインに向けた定量化技術と応用展開
(2021年1月8日 11:30〜12:50)
- なぜ触感定量化が必要か?
- 触感デザインによる感性価値の創造
- 感性価値に基づく製造の実現 (モノと感性をつなぐ中間表現)
- 触感計測と応用
- 触感計測の原理
- 化粧品開発への適用例
- 表面テクスチャによる触感制御と応用
- 表面テクスチャに基づく触感の定量化
- シボによる所望の触感の実現
- 触感表現に適した汎用的な物性表現
- 構造制御による触感の創出
- 触感のデータベース化の試み
- 触感シミュレーション
- 物体のモデル化
- 接触のモデル化
- まとめ
第3部 魅力的な触感設計要素とは:多次元性、多階層性、経時性、個人差を切り口とした分析指針
(2021年1月8日 13:30〜14:50)
多様な触感 (触知覚) を定量化する場合、多次元空間上で捉えることが有用な手段の一つである。触感における多くの次元解析事例を交えて、その利用可能性を概説する。また、触知覚メカニズムと触感の多次元性の結び付きについても併せて述べる。
また、ヒトの嗜好に近い触感性を、材質感 (ざらざら、つるつる) などのよりプリミティブな触感性と交えて定量化する場合、多階層的な触感モデルで捉えることが有用な手段を考えられる。このように触感を多階層的に取り扱う手法を個人差も交えて概説する。さらに、近年取り組んでいる触感の経時性に関しても、研究例などを交えながら述べる。
- 触感分析とは
- 触感の多次元性
- 多次元的な触感解析手法
- 解析事例
- 多次元的な触感解析における注意点
- 触知覚メカニズムとの関係
- 触感の多階層性
- 多階層的な触感解析手法
- 解析事例
- 多階層的な触感解析における注意点
- 触感の経時性
- 経時性を考慮した触感解析手法
- 解析事例
- 触感の個人差
- まとめ
第4部 風合い・肌触りの数値化
(2021年1月8日 15:00〜16:20)
「しっとり」、「さらさら」、「べとべと」… 感覚的な言葉で表される言葉は、新感覚のものづくりのヒントになることも多い。このような感覚を作り出すのはどのような物理的特性であるのか、風合い・肌ざわりを表す言葉の背後にある物理的因子を明らかにすることが必要である。それぞれの触感を特徴づける物理モデルの構築方法について解説し、それを材料設計に生かした例について具体例を挙げて紹介する。
- 風合い・肌ざわりの物理現象とは?
- 五感における皮膚感覚の重要性と特異性
- 触感の物理モデルの考え方
- 物理モデルと材料の微構造との関係づけ
- 背後の物理現象を理解するための官能評価データの解析
- 物理現象を意識した触感の官能評価
- 官能評価の多変量解析とその解釈
- 変量解析の落とし穴とその解決方法
- 機器測定と官能評価との関係づけ
- 触感の物理モデルに基づく材料設計
- 材料設計の具体例 (繊維製品や化粧品の実例を中心に)
- 触感設計の妥当性の評価
- 類似した感覚の見分け方
- 高次触感の解明と新触感の創出に向けて
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