タンパク質の凝集や相分離と低分子による制御 : 相分離生物学の基盤技術

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タンパク質の凝集や相分離と細胞内の現象との関連に注目が集まっています。タンパク質は本来凝集しやすい性質があり、異種の分子があれば相分離も引き起こします。このような溶液物性としてのタンパク質の当たり前の性質が、ふたたび注目され、細胞内にある多様な生命現象と関わることが相次いで報告されています。このような分野を「相分離生物学」といいます。  この講座では、新しく誕生してきた相分離生物学の分野を紹介し、この分野の見方を説明したいと思います。導入として、転写や翻訳やシグナル伝達などの中心的な生命現象のほか、酵素の連続反応やアミロイドや細胞の応答などを説明します。分子ではなく分子集合物を理解の単位とすることで、理解しやすくなる生命現象が数多く見つかってきており、これからも発見が続いていくと考えられます。例えば、2020年以降も、抗がん剤の効果やアミロイド仮説など、医薬とかかわる成果も登場しており、原核生物や植物などの成果もようやく出てきています。さらに、この分野の背後にある原理について、タンパク質の凝集や相分離などの研究成果も系統的にお話しします。

講習会のねらい

 相分離生物学という新しい分野に興味があり、まとめて概要を把握したい方に向けて内容を組み立てます。この分野は細胞生物学から溶液熱力学にまで多岐に及ぶために、独自に内容を理解していくのは困難です。そのためこの講座では、鍵となる文献を参照しながら概要を講義し、必要に応じてより専門的な内容を学べるように組み立てます。  また、この分野の背後にはタンパク質の溶液物性がかかわります。タンパク質の凝集や相分離とはそもそもどういうものか、これらをどう制御できるのかを知りたい方に、これまで私たちが研究してきた方法を整理して具体的に紹介します。製薬や高分子や食品などの分野の研究にかかわる方や、計測機器などの基礎研究の開発にたずさわる方にはヒントが得られるのではと思います。

  1. 相分離生物学とは
    • タンパク質や高分子の液 – 液相分離の仕組み
    • DNAとタンパク質によるドロプレットの形成
    • タンパク質やRNAのパラダイム転換
    • 酵素の連続反応の実現
    • プリオンやアミロイドの存在の理由
    • 「相分離メガネ」とは
    • 疎水性やハイドロパシー
    • パイ電子の相互作用
    • 溶解度と相分離性
  2. タンパク質の凝集と低分子による制御
    • タンパク質の凝集の仕組み
    • ホフマイスター系列・カオトロープとコスモトロープ
    • オスモライト
    • クラウディング効果
    • 選択的水和
    • タンパク質の化学劣化とアミン
  3. アルギニンの応用
    • アミノ酸とその誘導体によるタンパク質凝集抑制
    • アルギニンによる凝集抑制の仕組み
    • アルギニンによる卵白の加熱凝集の抑制
    • カチオン – パイ相互作用による芳香族化合物の溶解性
    • タンパク質溶液の粘度と低分子制御
    • アルギニンが凝集をふせがないタンパク質
    • 凝集抑制剤となる新しい化学骨格の探索
  4. 相分離テクノロジー
    • タンパク質の凝集と相分離の再現
    • 卵白の凝集と低分子による制御
    • 相分離タグによるペプチド精製
    • 高分子による酵素の超活性化
    • 液-液相分離によるバイオ医薬品の濃縮技術
    • 水性二相溶液による抗体の凝集体の除去

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