高薬理活性医薬品の製造には、①交叉汚染による患者へのリスク回避、②作業者の直接的曝露防止、③環境経由による市民等へ間接的曝露防止の3つの視点にたった総合的配慮が必要である。つまり、施設外への封じ込め策ならび施設内での薬物飛散抑制策を併せて講ずる必要がある。しかし通例、エンジ会社の提案する「専用施設化」、「独立空調・オールフレッシュ空調」、「エアロック室設置」、「アイソレータ設置」等の封じ込め策で満足する結果、清掃方法、更衣手順、服装具の管理、搬送台車の車輪の汚れ等の不備によるに薬塵飛散トラブルが発生している事例が散見される。洗浄バリデーションは共有設備のみを対象にするのではなく、専用設備であっても分解物等のキャリーオーバーが懸念されるので必要である。
また、クリーンホールドタイム (CHT) 中の汚染リスクを考察する場合、接薬部位だけでなく、天井・床等の非接薬部での交叉汚染リスクも考慮する必要がある。例え、接薬部の残留量が設定した許容値以下をクリアできても、薬塵飛散対策に落ち度があれば、CHT中の汚染を回避できなくなる。
高薬理活性医薬品の製造に際し、施設の設計時の留意点のみならず、ソフト面での留意点、さらには洗浄バリデーションの最近の動向として毒性データに基づく健康ベース暴露限界値 (HBEL) の要請、サンプリング時の留意点等について、演者の経験も交え解説を行う。
- 高薬理活性医薬品とは
- 毒性とは
- 毒性発現臓器 (組織) は変わる
- 施設専用化の対象物質
- βラクタム系抗生物質とは
- ホルモン剤は5段階の強度に分類される
- 封じ込め策
- 「汚染管理戦略」の構築・実践
- 潜在危険と運転の解析手法HAZOP
- 薬塵飛散源の例
- 共有設備内の交叉汚染に関するPIC/S備忘録 (PI043 – 1) を参考に
- 微粒子の特徴
- 床清掃法と用具の仕舞に配慮
- 環境清浄度だけでは飛散防止は無理
- 環境モニタリングデータの精度は低い
- 沈降粒子の巻き上げリスク
- 差圧だけで封じ込めはできない
- 施設・設備設計時の留意点
- エアシャワーは使用しない!
- 高薬理活性薬向き空調システム・差圧設定
- アイソレータの問題点
- 気流を乱す差圧変動に注意
- スモークスタディの実施
- 産業衛生 (Industrial Hygiene) の視点も必要
- 作業者保護対策
- 一日暴露許容量 (PDE) と職業暴露限界 (OEL)
- 作業者保護対策
- 体内取込量は粒子径で変わる
- 秤量室の作業者保護
- 脱衣中の保護策
- 作業改善を考える
- マスクの選択
- 吸気測定 (SMEPACの手法)
- 洗浄バリデーション
- シングルユース=洗浄バリデーション不要?
- ダーティホールドタイム (DHT) とクリーンホールドタイム (CHT)
- 留意すべきは想定外の汚染源
- 製造中の瓶破損などの配慮
- 床、壁の残留許容量はどう考えるか
- 残留許容値の設定
- 投与量基準 (0.1%以下基準、10ppm基準、目視限度基準)
- 投与量基準から毒性発現量基準へ
- Risk MaPPの論点 (ADEの算出)
- 健康ベース暴露限界値:HBEL
- 動物データの人への外挿による問題
- 残留許容値設定はまだまだ発展途上
- 目視検査の重要性
- 治験薬製造での留意点
- 不純物の残留許容値 (ICH Q3ガイドライン)
- 遺伝毒性不純物はどう考えるか
- ICH M7変異原性不純物ガイドラインとTTC (毒性学的懸念の閾値)
- サンプリング方法と箇所
- サンプリング箇所の設定
- スワブ法とリンス法の留意点
- プラセボ法 (ダミー法) の問題点
- 接薬表面積の算出例
- スワッブ材/抽出液ろ過用フィルター材の選定
- より進んだ手法 (QbD手法)
- 洗浄方法
- 手洗浄の留意点
- CIPの留意点
- 洗浄しにくい箇所 (Worst case Location)
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