次世代熱電変換材料の開発動向とナノ構造制御

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本セミナーでは、各種熱電材料の研究開発動向から、その性能を向上させるナノ構造制御技術まで、熱電材料の最新技術動向を一挙解説いたします。

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プログラム

第1部 ナノ構造化技術による熱電変換材料の高性能化・高効率化

(2011年12月5日 10:00~11:10)

 熱電変換材料をナノ構造化することによって、電子物性 (パワーファクター) を維持したまま熱伝導率を低減することによってZT向上が可能である。ビスマステルルをはじめいくつかのテルル化物、セレン化物で成功を収め、ZTが1.5前後まで上昇して来た。さらにZTを上げるためには、熱伝導率の低減だけでなくパワーファクターを上げる必要がある。このために微小領域や低次元構造における量子効果を利用するのが有効である。  本講座では、高性能化・高効率化を図るためのナノ構造化技術の最近の動向について、我々のCREST研究チームの成果を中心に解説する。

  1. ナノ構造における熱電効果
    1. 熱伝導率の低減による性能向上
    2. 量子サイズ効果によるゼーベック効果の増強
    3. 人工超格子における性能向上メカニズム
  2. バルク材料ナノ構造のシナジー的制御による高性能化
    1. チタン酸ストロンチウムの3D超格子構造
    2. TiS2系層状化合物及び無機/有機ハイブリッド超格子
  3. まとめ

第2部 酸化金属系熱電変換材料の開発動向と空孔分布制御技術

(2011年12月5日 11:20~12:30)

 一次エネルギーの約七割が廃熱として捨てられており、この廃熱エネルギーを有効に利用することは、地球温暖化問題を含む将来の環境・エネルギー問題を解決するための重要な解決策の一つであるといえる。固体のゼーベック効果を利用した熱電発電は、産業用から民生用まで分散的に存在する廃熱エネルギーを電力に変換する究極の分散熱エネルギー有効利用技術として位置づけることができる。  本講演では、酸化金属系熱電変換材料の開発動向と空孔分布制御技術と題して、日本発のコンセプトである酸化物熱電材料の研究動向と、我々大阪大学のグループにおいて精力的に研究している空孔分布制御によるナノ組織構築技術とそれに伴う熱電特性の性能向上研究について、最新の研究成果を交えながら概説する。

  1. イントロダクション
    1. 熱電変換とは?
    2. 熱電材料の設計指針
  2. 様々な熱電材料
    1. テルライド
    2. 高温材料
    3. 酸化物
    4. 新材料
    5. ナノ材料
  3. 酸化物熱電材料の研究動向
    1. コバルト酸化物からチタン酸化物へ
    2. 酸化物熱電素子の開発と応用展開
  4. 空孔分布制御によるナノ組織の構築
    1. 空孔の分布状態が熱伝導率に及ぼす影響
    2. 空孔の量が熱電特性に及ぼす影響
  5. まとめ

第3部 クラスレート系熱電変換材料の開発とモジュール化

(2011年12月5日 13:10~14:10)

 製造・運輸部門で棄てられている400℃以下の排熱を熱電発電により電気エネルギーとして回収することは、省エネルギーとCO2排出量削減の観点から期待されている。しかし、従来材料は200℃~300℃での性能が低く、実用化に至っていない。さらに、従来の熱電材料はTeなどの希少金属や環境負荷物質を含み、大規模普及には問題が多い。この問題を克服するために,我々はナノ構造を持つカゴ状物質であるクラスレート化合物に注目し、結晶構造解析や熱・電子伝導に関する基礎物性の研究をベースにして熱電変換性能の向上を目指してきた。  本セミナーでは、ナノ空間を形成するカゴと、カゴ内のゲスト原子とから構成される金属間クラスレートにおいては、カゴによって電気特性を、ゲスト原子によって熱特性を別々に制御できることを例示する。この特徴を活かして,熱電性能向上に必要な電気特性と熱特性を如何にして同時に向上してきたかを説明する。特にp型とn型とも200℃~300℃で無次元性能指数ZTが1.0を超えたBa8Ga16Sn30とその元素置換系について詳しく述べる。最後に,これらを用いた熱電モジュールの開発の現状についても述べる。

  1. フォノンガラス・電子クリスタルの概念
  2. クラスレート結晶構造の分類と特徴
  3. クラスレートの電子バンド構造
  4. 典型物質Ba8Ga16Sn30の構造と熱電特性
    1. 異形結晶構造とキャリアの制御
    2. I型Ba8Ga16Sn30の熱電特性
    3. VIII型Ba8Ga16Sn30および元素置換系の熱電特性
  5. クラスレートを用いた熱電モジュールの試作と性能評価
  6. 今後の展望

第4部 スクッテルダイト熱電変換材料の熱電気的特性と開発の現状

(2011年12月5日 14:20~15:30)

 スクッテルダイト化合物はノルウェーの鉱山のある地名に由来する金属間化合物で、米国のジェット推進研究所 (JPL) で研究を始めて以来、熱電材料として研究が進んだ材料である。この化合物の中で、結晶中の大きな空隙に希土類元素などを充填した充填スクッテルダイト化合物は、充填元素が自由に熱振動 (ラットリング) するため、充填していない化合物に比べて異常に熱伝導率が低く、元々の母体結晶の電気的特性が良好なことも相まって、高い熱電性能を示す。最近の熱電材料開発の指針である「熱的にはアモルファス、電気的には単結晶 (Phonon Glass Electron Crystal) 」を実現する代表的な材料である。  本セミナーでは、充填スクッテルダイト化合物も含めたスクッテルダイト化合物の熱電気的特性について紹介し、その熱電材料としての可能性と開発の現状について述べる。

  1. スクッテルダイト化合物の種類と構造
    1. スクッテルダイト化合物の種類
    2. スクッテルダイト化合物の結晶構造
  2. スクッテルダイト化合物の電子構造
  3. スクッテルダイト化合物の熱電気的特性
    1. スクッテルダイト化合物の熱電気的特性
    2. 充填スクッテルダイト化合物の熱電気的特性
  4. スクッテルダイト化合物の合成プロセス
  5. スクッテルダイト化合物を用いた熱電発電素子
  6. まとめ

第5部 有機熱電変換材料の高機能化と実用化・普及に向けた課題

(2011年12月5日 15:40~16:50)

 有機熱電変換材料が興味を持たれている。  有機材料が入手し易く、環境や人間にも優しく、加工しやすく、安価であるなどの特徴があるためだ。  また、従来、有機熱電変換材料は性能が悪く問題にならないとされていたが、近年、性能は徐々に向上しており、実用化が見えてきたと感じられ始めているようだ。  有機熱電変換材料の現在の実力について解説すると共に、将来の実用化可能性について一緒に考えたい。

  1. 有機熱電変換材料の特徴
  2. 有機熱電変換材料のこれまでの展開
    1. ポリアニリン
    2. ポリピロール
    3. ポリフェニレンビニレン
    4. ポリチオフェン
  3. 有機熱電材料の性能を決める因子と性能向上に向けた取り組み
    1. 電気伝導度
    2. ゼーベック係数
    3. 熱伝導度
  4. 無期-有機ハイブリッド熱電変換材料
  5. 有機熱電変換材料研究の最近の動向
  6. 有機熱電変換材料研究の今後の展開と実用化・普及に向けた課題
  7. まとめ

会場

連合会館
101-0062 東京都 千代田区 神田駿河台三丁目2-11
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