本セミナーでは、国内外における陸上・洋上風力発電を取り巻く最新動向と将来的な展望について解説いたします。
2020年に入り、洋上風力発電への期待が強まっている。日本、ドイツをはじめとした各国における固定価格買取制度の見直し、入札制度の導入等、一部の先進国において再生可能エネルギーを取り巻く環境が変貌する状況において、陸上風力発電に加えて、洋上風力発電の重要性が、世界的に一段と強まっている。 風力発電は、もともと開発の歴史が長く、技術革新、機器の大型化、量産効果により、発電コストが低下している。世界的に発電コストは、平均1キロワット時当り8.8円程度とグリッド・パリティーとなっている。風況の良い場所においては、大量の発電を行うことが可能であり、2018年末時点において、世界全体で5億9,100万キロワットに達する風力発電設備が稼働し、米国カリフォルニア州をはじめとした大規模風力発電所 (ウィンド・ファーム) は、100万キロワットを超えるものが誕生している。風力発電は、ライフ・サイクルで見た炭酸ガス排出量が少なく、独立した分散型電源として、離島、過疎地の電源としても利用が可能であり、夜間にも発電できる。既に、国土面積が広い中国、米国等においては、風力発電の普及が進み、今後は、電力需要の伸びが著しい台湾をはじめとしたアジア、アフリカ等における風力発電の普及が見込まれている。風力発電に関しては、発電量の増加、発電コストの低下を目指して、機器の大型化が行われており、洋上風車の直径は200メートルを超え、1基当たりの発電量も1万キロワット超のものが開発されている。 日本は、世界第6位の排他的経済水域 (EEZ) を誇り、洋上風力発電の今後の発展が期待されている。日本は、2040年には7,000万キロワット近い風力発電の導入が見込まれ、そのうち半分は洋上風力発電が予測されている。しかし、デンマーク沖合いと異なり、日本の場合には遠浅の海域が少なく、今後は着床式から、浮体式洋上風力発電の技術開発が期待され、2018年12月には、洋上風力促進法 (再エネ海域利用法) が成立し、最長30年間、海域を利用できる規制緩和が行われ、洋上風力発電建設用のSEP船の建造も行われている。2019年8月には、秋田県をはじめとして、4ヵ所の洋上風力発電の有望区域を経済産業省が選定し、戸田建設、東京電力ホールディングス等が、実証実験を行っている。2019年12月には長崎県五島市沖が促進区域に指定された。長期的にも、世界における2030年までの経済波及効果は、15兆円に達すると見込まれている。台湾も2025年までに570万キロワットの洋上風力発電を計画し、世界の洋上風力発電は、2030年には2億2,800万キロワットに達することが見込まれる。 今後も世界的に陸上・洋上風力発電の拡大が見込まれ、2030年には21億1,000万キロワットと、世界の発電能力の2割を占め、世界の風力発電市場は、200万人を超える雇用を創出すると予測されている。風力発電は、太陽光発電と異なり、風車、軸受け、発電機等のモノづくりの集積であり、風車に用いる炭素繊維をはじめとして、日本企業が素材・部品の強みを持っている。しかし、世界最大の風力発電国は、米国を抜いて中国となり、中国は国内メーカーの育成に力を入れている。中国企業、インド企業の台頭、欧米企業の風力発電事業強化により、風力発電における発電効率向上、価格競争が熾烈となっている。日本は、風力発電事業から撤退する企業もあり、時間がかかる環境アセスメントの規制、立地の制約、漁業権等から、当初期待されていたほど風力発電の開発が行われていない。陸上風力発電、洋上風力発電が、日本および世界において、どのように成長するのか、日本企業にとってのビジネス・チャンスについて的確に詳説する。
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