相分離生物学とは、分子と構造から見た物質の科学ではなく、状態と相互作用から見た現象の科学である。これまで主流だった分子と構造の科学では理解しにくかったさまざまな現象が、相分離生物学の見方によって理解されようとしている。その生命現象は、転写や翻訳やシグナル伝達などの細胞内にある中心的な現象だけでなく、酵素の本来の反応や、タンパク質のフォールディング、RNAや天然変性タンパク質のあり方、アミロイド仮説の見直しなど多岐に及ぶ。
本講座では、相分離生物学の概略を説明するとともに、このような分野の基盤をなすタンパク質の溶液科学について講演する。タンパク質の溶解性や凝集の研究は歴史も古く、低分子の添加剤でかなり合理的に制御することができる。このような見方は、食品や医薬品や美容などとの産学連携の研究ともかかわる。また、これから相分離生物学が広がるにつれて新しい計測機器の開発も必要になるだろう。今後のこの分野の可能性について最後に議論する。
新しく誕生してきた相分離生物学の誕生の経緯から現在の状況までを、世界中で報告されてきている最新の成果を用いて説明する。また、これらの基盤になるタンパク質の凝集や相分離という基本的な現象について説明し、産学連携にどのようにつながるのかを具体的に解説する。
- 相分離生物学の誕生
- 相分離生物学とは
- 高分子の相分離とタンパク質の相分離の違い
- 情報伝達
- タンパク質パラダイムの転換
- 構造生物学
- 天然変性タンパク質の働き
- 天然変性タンパク質と相分離
- RNAパラダイムの転換
- セントラルドグマ
- 多様なRNAの存在
- RNAも相分離する
- 酵素パラダイムの転換
- 代謝
- 酵素の連続反応
- 細胞内にある酵素の相分離
- 酵素の超活性化
- アミロイドと相分離
- タンパク質は液体にも固体にもなる
- 同じ成分で作り分ける共凝集と相分離
- アミロイド仮説
- ドロプレット仮説
- プリオンがなぜ存在するのか?
- タンパク質の凝集と凝集抑制剤
- タンパク質の凝集モデル
- 添加剤による凝集抑制法
- ホフマイスター系列
- 排除体積効果
- オスモライト
- 添加剤としてのアルギニン
- アミノ酸誘導体と凝集抑制
- アルギニンを代替する低分子添加剤の可能性
- 相分離テクノロジー
- 相分離タグによるペプチド精製
- 卵白タンパク質の加熱凝集のメカニズム
- 高分子電解質・タンパク質複合体
- 酵素の機能スイッチ
- バイオ医薬品の安定化と濃縮
- 産学連携の例
- 相分離生物学の今後
- 状態機能相関
- 疎水性と相分離性
- タンパク質の溶液状態の科学
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