昨今、日本の種々の産業分野で新製品開発にナノ粒子の活用研究が盛んに行われているが粒子径が小さくなればなるほどその凝集性が高くなり分散が難しくなる。分散の目的は凝集した粒子をぬらし、機械的攪拌下解きほぐし、経時再凝集の無い安定な分散体を得ることである。
このプロセスを達成する概念として“分散の三要素[①ぬれ性、②解きほぐし性、③分散体の安定性]”というのがある。この概念は水系分散に50数年前に提案された非常に古いものであるが、最近のナノ粒子の分散にも十分に適応できる分散の基礎概念であり、溶剤系にも応用できる。この“分散の三要素”を理解するには界面活性剤の基礎知識が必要となる。また被分散体である粉体についても、粉体は何故凝集するのか、粒子径が小さくなればなるほど凝集が強くなるのかを知る必要がある。“ぬれ性”を機械力も含めどうコントロールするかが凝集を解きほぐすのに重要になる。
一方、分散を考える時溶媒の種類が重要になる。水系分散か、非水系分散かによって分散剤の選定方法が異なる。分散媒が非水系となるとその溶媒の極性が大いに異なり (極性溶媒、中・低極性溶媒、非極性溶媒等) 、溶媒の極性によってそれら溶媒と分散剤の親和性を考える必要があり選定基準が異なる。非水系分散にはぬれの基準になる“SP値”、吸着の基準になる“酸・塩基相互作用”が重要になる。
このセミナーでは如何に安定な分散体を得るか、分散の基本概念である“分散の三要素”を理解し使いこなすために必要な界面活性剤の基礎知識及び粉体粒子の物性、溶媒の極性の差異等について説明し分散について応用の利く知識を身に着けてもらいたい。またこれらの基礎知識をもとに分散剤の簡易選定方法、分散体の簡易評価法についても説明する。これらの知識をつけると今まで疑問になっていた分散現象が理解でき、対応策等の立案にお役に立つものと考える。
- 分散 (剤) とは
- 粉体の性状と物性の関係は
粉体の粒子径 (Particle Size) と粒子形 (Particle Shape) と分散との関係
- 粒子径と粉体凝集性
- 粒子形と粉末凝集性
- 形による凝集性の違い。板状粉体 (平面体) は凝集しやすい。
- 粒子の持つ表面エネルギーと凝集性
- 粉体の粒子径が小さくなればなるほど表面エネルギーが大きくなり、凝集が強くなる。
また酸素との反応が激しく起こる (例) 鉄粉の発火、ネオジムの発火
- 等電点とは
- 系のPHによって粉体の表面電荷が変化。分散との関係は。
- 分散 (剤) の理解につながる界面活性剤の知識とは
- 界面活性剤の国際定義
- 界面活性剤の基本的機能、物性とは
- 面活性剤のイオン性
- アニオン、カチオン、ノニオン、両性の使用上の違いは
- 安定な分散体を得るために必要な界面活性剤の基礎知識とは
- 表面張力とは
- お互いに接する面積を最小にしようとする力⇒分散との関係は?
- ぬれとは
- 凝集粒子を一次粒子にするために分散初期段階で必要な性能
- ミセルとは
- 球状ミセル⇒粉体粒子を球状ミセルで包み込むことが分散
- HLBとは
- 親水性と親油性のバランス値⇒粉体の極性により使い分けする溶媒の種類 (水系か非水系か) によってHLBの値を使い分ける
- DLVO理論と分散について
- 電気二重層と分散性の関係
- ゼータ電位とは、その大きさと分散性の関係
- 高分子分散剤を使った時にDLVO理論は成立するのか
- 高濃度分散体の場合DLVO理論は成立するのか
- 分散の三要素について⇒分散の基礎理論
- ぬれ (初期分散性) 性
- 解きほぐし性
- 分散体 (スラリー) の安定性
- 水系分散剤について
- 良好な分散を得るための考え方とは
- 水系分散剤選定のポイント
- 粉体の極性 (親水性、疎水性) により異なる
低分子湿潤・分散剤と高分子分散剤の分散性、性能の差異、使い分けについて
- 簡易分散剤選定法、簡易分散体評価法について
- スパチュラ法
- 粘度・添加量曲線の作成
- 試験験管沈降法
- グロス試験他
- ナノ粒子の分散について
- 分散の三要素との関係、ぬれ (湿潤・分散) に重点を置きぬれ剤の選定を実施
- カーボンナノチューブの分散について
- π電子 – π電子相互作用による分散剤の吸着、安定化について
- 溶剤系分散の選定のポイントについて
- 分散剤/溶媒/粉体の相関による分散性への影響について
- SP値の考え方、使い方
- ソーレンセンの酸・塩基相互作用の考え方、使い方
- 分散剤と粉体間に強い吸着を形成するには (酸価、アミン価の使い方)
- 櫛形ポリマー系分散剤について
- 市販分散剤メーカー及び代表品名構造、組成一覧
- 参考資料、書籍一覧
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