晶析とそれに続く固液分離 (濾過) は化学製品の製造ではごく普通に行われる操作である。晶析プロセスでは再現よく結晶の特性を制御し、目的の結晶を製造する必要がある。制御する特性には粒径や粒径分布、結晶多形、純度、形状、結晶化度など様々なものがあり、制御できなければその後の遠心脱水工程や品質に影響を及ぼすことがある。例えば濾過性の悪い結晶は精製効果が得られず、品質だけでなく作業性にも影響が出る。濾過性のよい結晶でも、溶媒和物、水和物が生成すればその後の乾燥工程に影響する場合がある。
本セミナーでは,具体的に商用生産に至った化合物を例に、スケールアップ検討の過程で遭遇した結晶多形、類縁物質、溶媒和物、水和物等、晶析が絡む種々の問題点をどのように解決して商用生産に至ったかを解説する。
- 医薬品 (原薬) の開発とスケールアップ (基本的な考え方)
- 実験室スケールとスケールアップの相違点
- 小スケールとスケールアップのパラメータの比較と考え方、設定法
- スケールアップ実験するためのチェックポイント、考え方
- 原料、中間体の評価項目 (安全性、安定性、結晶多形、溶媒和他) とその対応策
- 晶析に関する一般的事項
- 結晶化工程がスケールアップ可能か実験室で確認する方法 (例)
- 濾過性の悪い結晶の対応法
- どのような改良をして商用生産に移行したか (いくつかの実例を参考に)
- 結晶多形の管理、類縁物質の管理
- 安定型+準安定型の混晶が得られた場合の対処法、その他
- 溶媒和物 (水和物) の考え方
- 溶媒和物の脱溶媒和法
- 水和物の脱水法
- いくつかの事例、経験から 実験室で簡単に評価できる方法
- スケールアップを想定した実験法 (スケールダウン実験)
- スケールアップでの事例
- 爆発性中間体の回避 (抗生物質側鎖)
- メチルエステル、エチルエステルの比較実験をして、中間体の物性を比較。結晶性誘導体を利用することで合理的な合成法に至った。
- 抗生物質側鎖
- アミノチアジアゾール誘導体の製造:溶媒和物とすることで結晶化
- 目的物が異性化 (抗生物質側鎖:アミノチアゾール酢酸誘導体の製造)
- 再結晶プロセスをスケールアップしたら目的物が得られなくなった。
- 目標規格の原料が手に入らない
- 商用生産に入ろうとしたら原料が入手できなくなった。結晶化することで精製
- アミノチアゾール酢酸製造のスケールアップ
- パイロットまでは問題なかったが、商用生産で乾燥機の選択を誤った。
- キャンペーン生産
- スポット生産では問題なかったエステル交換反応をキャンペーン生産に切り替えたところエステル交換反応が進まなくなった。
- 混晶のままIND申請。その後の対応。
- 結晶多形の同等性
- 乾燥時間の管理
- 順調に商用生産がスタートしたが、製品の乾燥時間が突然2倍 (10時間→20時間) になった。
- 水和物の乾燥方法、乾燥終点の設定
- 溶媒和物の乾燥法
- その他