これまでの100年間で、McKelvyの時代から存在する混練、分散の理論は、微視的かつ理想論的な理論であった。一方、分散の均一性を評価する理論も一部には存在していた。しかし、全体の混練操作を通して、分散の均一性を達成するための理論がこれまで不完全で、使い物にはなっていない。特に押出機全体で (場所的) 、および材料が分散される過程で (時間的) 、微小単位の材料の集合体各々の分散の均一性が異なるのであるから、そうた易く均一性操作の理論が出来るわけではない。
20年ほど前Steavens工科大学が世界の主な企業を巻き込んで、FEM (有限要素法) を手法にして、場所的、時間的に変化する全粒子の被せん断量の解析を行い、分散品質との相関を模索したが、結局成功しなかった。このように、現状では、品質のスケールアップは大変な命題である。
2軸押出機も例外ではない。部分的かつ不完全ではあるが、これまで分散品質に関するスケールアップの方法が試みられた。完全回答が得られないまでも、そこには種々の指針が潜んでいる。実務者がこれらを熟知して、自分の実験で、分散品質を再現する目的の操業の中で、これらを旨く取り入れていくことが必要である。完全には当たらずとも遠からずの極意である。
本講演では、私の知る限りの前記「種々の指針」を伝えたい。私なりにいくつか応用を行っているので
詳細を説明する。皆さんの今後の実務、研究の上で有益な情報になると信じている。
- これまでの主な高分子材料混練、分散理論
- せん断流動分散理論
- McKelvyの必要せん断応力理論
- 橋爪の必要せん断応力と必要せん断歪み理論
- FEMを用いた解析の試み
- 不均一分散の実態:
- 均一せん断では分散が進まない
- せん断分散手法と分散の不均一性が同居する
- 伸長流動分散理論
- ほぼ均一分散の実態
- 発熱が少ないので、せん断分散手法と分散の均一性が同居できる
- 混練とは何か、何を目的とした操作なのか
- 高分子材料の分散の実態
- 分散とは凝集破壊が主目的で、一次粒子の破壊ではない
- 高度分散における材料補強理論
- 無機ナノコンポジットにおける材料強度補強の特異性
- ポリマーサブミクロンおよびナノ分散の物性の特異性
- せん断流動分散理論 (コンパウンド、ポリマーブレンド)
- せん断流動分散のメカニズム
- McKelvy理論と橋爪理論の違いと実証実験
- T関数、黄金分割理論などの付随理論
- 2軸押出機と各種混練機におけるせん断付加特性
- 不均一分散が発生するメカニズム、理論
- 不均一分散解消のための幾つかの試み
- 相似実験 (スケールアップ理論) 応用技術
- 挙動の相似と品質の相似
- 高分子分散で分散品質に係わる相似則が応用できない理由
- 緩和則の理解と応用
- 緩和則としての分散パラメータの応用
- 従来の分散パラメータと新しい概念の分散パラメータ
- カーボンブラック分散での応用例
- 伸長流動分散理論 (ポリマーブレンド)
- 伸長流動分散のメカニズム
- ポリマーブレンド分散にのみ応用が可能である
- 均一分散のメカニズム、理論
- 均一分散の実際
- せん断流動分散と伸長流動分散の適応領域
- キャピラリー数の応用と過去の文献
- 伸長流動分散技術
- Utracki理論と橋爪理論の違いと実証実験
- Nylon中へのHDPE分散への応用
- 2種エラストマー分散への応用
- 分散粒子変形におけるくびれ発生条件の理論
- Rayleigh乱れと溶融破壊現象の解明
- 内部摩擦説による破壊 (滑り) 現象による解析
- スラリー分散技術 (コンパウンド)
- 全く新しい分散概念
- 均一分散が可能なコンパウンド技術
- PET中へのTiO2分散への応用
- コンパウンドにおけるナノ分散技術
- トピックス