本セミナーでは、環境負荷の低減、高効率、安全性など、様々な利点をもつフロー合成について取り上げ、フロー合成の基礎から、技術動向、研究例、実用化に向けた課題や展望などについて解説いたします。
あらゆる製品の供給において、利潤を最大化するためには製造から市場までを一体化 (連続) させることが重要です。食品や電化製品、自動車などではこの方式により既に効率の良い生産システムが構築されています。ところが、化学製品、特に医薬品などを代表とする高付加価値化学品の製造においては、生産システムの上流、すなわち製造過程で特に連続化が困難とされてきました。これは、医薬品などは構造が複雑なため、「流れ作業」的には到底製造できないと考えられてきたためです。従って、このような高付加価値化学品は大企業においても、高校・大学の化学実験で行うようなフラスコ反応様式によって製造されています。一方、演者らの注目する連続フロー法はこの現状を一変させる能力があり、化学品連続生産を現実にする切り札と言われています。しかし当然、これを現実のものとするためには、ボトルネックとなっている課題を解決する必要があります。 本講演では、この課題克服のために検討されてきた、過去10年ほどの研究例をベースに、演者らの考えや展望などを概説します。