五感のうち、最もデバイス化が遅れているのが「嗅覚」です。人工嗅覚の実現を難しくしている大きな要因が、その測定対象である「ニオイ」の複雑さです。「ニオイ」とは、40万種類以上といわれる各成分が、任意の割合で数種から数千種混ざり合って形成されるものであり、さらにこれが時間的にも空間的にも絶えず揺らぎます。この捉えどころの無い「ニオイ」を測り、人間が理解できる情報に変換する嗅覚センサの実現は、最高難度の科学技術課題のひとつといえます。この実現に向けて、嗅覚センサに要求される要素を網羅した膜型表面応力センサ (MSS) を中心に、最先端のハードウェア (センサ素子+感応膜など) とソフトウェア (機械学習など) について、基本的な原理から、それらの要素を統合する総合的な研究開発まで、最新の成果や産学官連携体制と共にご紹介します。
- はじめに
- ニオイとは
- 嗅覚センサの現状と可能性
- MSSとシステム要素技術の研究開発
- ナノメカニカルセンサについて
- カンチレバーからMSSに至る経緯の技術的開設
- MSSの動作原理と各部の役割について
- 感応膜の設計と各種被覆方法
- 嗅覚センサシステム設計のポイント
- 基礎的なデータ解析
- MSSの応用例
- 社会に貢献できる嗅覚センサシステムとは
- 産学官連携による最先端技術の垂直統合
- MSSアライアンスと最新成果紹介
- MSSフォーラムのご案内
- ハード (センサ) とソフト (機械学習) の双方向開発
- ニオイから特定指標の定量抽出
- 特徴量抽出のポイント
- 各種解析方法と得られる結果の考え方
- 情報計測による化学センサの新たな展開
- 気体分子の新たな絶対量評価手法
- 流体熱力学質量分析 (AMA)
- 解析モデルの導出
- アプリケーション事例と今後の課題
- まとめ
- 生体ガスによる非侵襲性医療診断の動向と可能性
- 嗅覚センサのアプリケーション分類
- 固体 – 気体界面における感度の考え方について
- 化学センサにおける標準化について
- 将来展望と今後の課題、最新研究動向
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