仰々しい真空装置を必要とする減圧プラズマプロセスと比較すると、低温大気圧プラズマプロセスは、目的にもよりますが、比較的簡便な装置で材料プロセスを実施することができます。それ故に、あまりメカニズムなどを考えずとも、装置を買ってくれば、目的とすること (クリーニング、密着性向上、アッシングなど) ができてしまいます。しかし、放電メカニズムや反応メカニズムを知らないと、いざ性能向上を図ろうとしたときに、どのパラメータを操作したらよいのかで足踏み状態になる可能性があります。
本講演では、物体の表面処理に利用されることの多い低温大気圧プラズマの代表的な応用例である表面処理を取り上げ、その処理プロセスのうち既知となっているメカニズムを説明するとともに、そのプロセス能力を最大化するためには、どの操作ノブをどのように操作したらよいのかを説明します。
- プラズマプロセスはなぜ嬉しいのか (どんなときに嬉しいのか) ?
- 材料プロセス技術には非プラズマプロセスも多数ありますので,それらと対比してプラズマを使うと何が嬉しいのかを説明します。
- 材料プロセスにおける活性種というもの
- 活性種は「すぐに不活化する (活性だから) 」
- 活性種は「使いたいときに,使いたいところで生成すべし」
- プラズマを使うとなぜ嬉しい?
- 低温大気圧プラズマとは?
- 「低温」かつ「大気圧」でプラズマプロセスができることの意義を確認します。
- 減圧プラズマとその御利益 (低温である!)
- 減圧プラズマの難点 (低温だが,真空に非対応な対象はダメ)
- 大気圧プラズマの難点 (真空不要だが,普通は超高温)
- 大気圧プラズマも低温にできる! (液体や生物も対象に!でも,なぜ低温?)
- 「低温」&「大気圧」のプラズマの御利益と応用例
- 従来の減圧プラズマでは不可能であった例を中心に、表面処理、液体処理、生体処理の例を概説し,具体的応用例を通じて低温大気圧プラズマ御利益を説明します。
- 一般論 (真空装置不要なので,オープンエアーでプロセス可能)
- 表面処理 (高温だったら,高分子は溶けてしまいます)
- 液体処理 (減圧だったら,液体が沸騰してしまいます)
- 生体処理 (減圧や高温だったら,生体は死んでしまいます)
- 平行平板型誘電体バリア放電
- 代表的な低温大気圧プラズマの生成法である誘電体バリア放電について説明し、電極間隔の選定、誘電体材料の選定、ガス流れの有無、基板スライドの効果、ガス組成の効果、配管の影響について説明します。また、電極のアレンジを少し変えた同軸型、パックドベッド型、沿面放電型などについても紹介します。
- 誘電体バリア放電とは?
- 電極間隔 (かなり狭い!)
- 誘電体材料の選定 (誘電率,厚み,耐プラズマ)
- ガスの流れの効果 (流れると均一,滞留すると不均一)
- ガスの組成の効果 (Heは均一,それ以外はかなり不均一)
- 配管の影響 (金属配管と樹脂配管の違い)
- バリア放電方式の様々な形態
- 平行平板型と同軸型
- パックドベッド型 (電極管に誘電体のつぶつぶを充填)
- 沿面放電型 (面上にプラズマ発生)
- 大気圧プラズマジェット
- 二つの電極の狭い隙間でしか得られないバリア放電と異なり、本方式は大気圧下でジェットが数センチも伸びるため、自由度が極めて大きくなります。なぜそんなにジェットが伸びるのかというジェット生成機構や各種パラメータ (ガス流速の影響、ノズル径の選定、ガス種) の影響を細胞接着性向上や骨再生スキャフォールドの親水化処理などの例を交えて説明します。
- 平行平板型の難点 (対象が薄いものに限られる,プラズマが近い)
- ジェット型の見た目の利点
- リモート型である
- 対象の形状制限払拭
- 工業ロボットと合体
- ジェット生成機構には二つある
- アフターグロー型 (活性種が下流に押し流される)
- グライディングアーク型 (ガス流れで高温プラズマを低温化)
- プラズマ弾丸伝搬型 (放電現象そのものが伝搬する)
- プラズマジェットの各種パラメータ依存性
- ガス流速の影響 (ガス流の大小は何に効く?)
- ノズル径の影響 (ノズルの太い・細いは何に効く?)
- ガス種の影響 (放電ガスの影響,雰囲気ガスの影響)
- まとめ
- 低温大気圧プラズマを利用する際の視点を総括。大気圧なのは嬉しいが「なぜ低温か」を理解するとともに、「なぜその方式を使うのか」を明確にする。
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