第1部. 消化器外科領域における癒着防止剤のニーズ
(10:30~12:00)
消化器外科領域においては近年低侵襲手術である内視鏡外科手術が多くの分野で応用されている。本術式はこれまでの開腹術に比べ、整容性をはじめとした身体的負担の軽減や入院期間の短縮の観点から利点が多い。また本術式は合併症としての癒着による腸閉塞が起こりにくいとわれている。
今回講座では我々が行っている消化器外科領域における主要疾患の内視鏡外科手術の代表的な手技を供覧する。その上で術後癒着に対する防止に関しその手技と工夫について供覧するとともに癒着防止材の種類、その使用法や今後の課題などについて解説する。
- 本邦における内視鏡外科手術の変遷と現況
- 講演者の治療経験 (主に前勤務先)
- 手術内容・件数および臨時手術内容・件数の推移
- 内視鏡外科手術内容と件数の推移
- 腹部救急外科領域手術内容と件数の推移
- 低侵襲手術センターの開設
- 基本的な手術手技
- 消化器外科領域主要疾患における内視鏡外科手術手技
- 大腸がんにおける開腹術および内視鏡外科手術手技
- 癒着防止材の使用法と工夫点
- 開腹術における癒着防止法の実際
- 内視鏡外科手術における癒着防止法の実際
- 消化器外科領域において使用される癒着防止材と今後の課題
第2部. 癒着防止材の材料と効果評価・開発のポイント
(12:45~16:00)
腹膜癒着を抑制する材料として、Seprafilm (米Genzyme社) 、Interseed (米Jhonson&Jhonson社) に加えて最近はアドスプレーが上市された。しかし依然として癒着防止性能や臨床医の使用感を完全に満たすような癒着防止材は存在していない。我々はinjectableゲル材料、スプレー材料、シート材料などの様々な検討を行うとともに、肝臓切除後の癒着に着目して研究を行っている。本講演では、基礎的な事項の解説から始まり、最新の研究も紹介しつつ、癒着防止材開発の評価ポイントを考えていく。
- 腹腔、腹膜、腹膜癒着
- 腹腔の解剖生理
- 腹膜の構造、断面形状
- 腹膜表面積の実測
- 腹腔臓器の位置と漿膜の関係
- 腹膜構成細胞の性質
- 腹腔構成細胞 – 中皮細胞・腹腔Mφ・繊維芽細胞
- 腹膜中皮細胞の性質
- 腹膜癒着
- 腹膜癒着の病理
- 正常治癒と腹膜癒着
- 癒着の過程と細胞数の変動
- フィブリンブリッジの形成
- 腹腔Mφの性質
- 腹腔液の循環と癒着
- 腹腔鏡と癒着
- 最近のトピックス1:MSCの応用
- 最近のトピックス2:MMT (中皮間葉転換) と癒着
- 動物モデルの選択
- 盲腸擦過/腹壁切除モデル
- 子宮角摘出モデル
- ボタン形成モデル
- 肝臓切除モデル
- その他のモデル
- 腹膜癒着防止材料
- 認可されている癒着防止材料
- Seprafilm
- Interceed
- Intergel
- Precrude
- Repel-CV
- アドスプレー
- In situ架橋ハイドロゲルを用いた新しい癒着防止材料
- コンセプト
- 材料の選択
- ハイドロゲルの物性
- 細胞毒性
- ウサギ癒着モデルによる癒着防止効果と材料設計の関係
- スプレー材料の新たな開発
- シート状マテリアルの新たな開発
- 材料設計に与える因子の議論
- ドラッグデリバリー機能の利用
- tPAの利用
- ステロイド剤の利用 (その他抗炎症薬も)
- PLGA粒子とのハイブリッド化
- 最近のトピックス1:抗TGF – β阻害ペプチド
- 最近のトピックス2:HIF阻害
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