(2019年7月23日 10:00〜11:30)
スマート社会の実現に不可欠なエネルギーハーベスティングやデバイスの放熱問題の意識の高まりを受け、ここ数年で熱エネルギーの取り扱いに大きな関心が集まっている。ナノ構造を含んだ材料・デバイス中の熱伝導はフーリエ則で記述できず、弾道性などのナノスケール特有の輸送特性を考慮しなければならない。近年、熱伝導をナノスケールの視点から理解したうえで材料や構造を設計することで、材料性能を飛躍的に向上させることが可能になってきた。本講演では、ナノスケールでの熱伝導 (フォノン輸送) を巧みに制御するフォノンエンジニアリングの基礎をわかりやすく解説し、フォノニック結晶ナノ構造を用いた系を取りあげながら、より高度な熱伝導制御と熱電変換応用などへの取り組みをわかりやすく紹介する。
(2019年7月23日 12:10〜13:40)
本講演では、ナノ構造化によるバルク体熱電変換材料の高効率化、資源制約の少ない硫化物熱電変換材料、それらを用いた高効率熱電発電モジュール、加えて、評価技術や熱電発電の応用などについて紹介する。我々のグループでは、ナノ構造を形成することで、バルク体熱電変換材料の性能指数を2倍以上に向上させることに成功している。さらに、希少・毒性元素を利用しない新しい熱電変換材料として硫化物の研究を進めている。そのうえ、これら新規熱電変換材料を応用する上で重要となる、モジュール化ならびに評価などに関する技術も蓄積している。例えば、ナノ構造を形成した熱電変換材料に適した電極とその形成技術を開発することで、従来技術を凌駕する12%の変換効率を達成している。
(2019年7月23日 13:50〜15:20)
地球上で産生されたエネルギーのうち約7割のエネルギーが200℃以下の低温廃熱として捨てられている現状がある。熱電素子によりこれらの低温廃熱のエネルギーハーベスティングが実現できれば、地球温暖化抑制や省エネ対策に大きく貢献する。しかし、代表的な熱電変換材料であるBi2Te3をはじめ、現在研究されている多くの材料系では、Pb、Te、Seといった毒性の高い元素や希少な元素が用いられているため、宇宙用などごく限られた分野での利用に留まっていた。近年注目されている硫化銅鉱物系熱電材料は、安価で安全、資源的にも豊富だが、熱電変換性能が未だ低いという問題がある。我々は、種々の硫化銅鉱物ナノ粒子を化学合成し、それらをビルディングブロックとして階層的欠陥構造を有する熱電材料を創製することで、硫化銅鉱物系熱電材料の高性能化を図り、p・n型双方の熱電材料において400℃以下の温度領域で無次元性能指数ZT > 1を達成することを目標として研究を行っている。
(2019年7月23日 15:30〜17:00)
廃熱を電気として再利用可能にする熱電発電は、非常に興味深いものです。その中で、ナノ構造を導入すると性能向上するという報告が多くなされており、そのメカニズムについても多々あります。本講座では、ナノ構造を導入した際に生じる“界面”に注目して、これらの性能向上を理解することを狙います。また、制御性の高いナノ形成技術を用いてよく定義された界面構造を作製することで、どのような物理現象で性能が上がるのかを実験的に調べた結果をご紹介いたします。最終的に、こうした物理に基づいて開発したナノ構造薄膜材料の一つの応用として透明熱電材料への展開に触れます。根底にある学術から応用への展開について網羅する内容となっています。