近年、化学・素材企業をはじめとする製造業に対し、排出CO2や廃棄プラスチックに関する各種の環境関係規制が欧州を起点として議論されており、またその一部は既に施行されている。欧州の化学・素材企業は、このような規制への対応を長期的戦略の前提として取り入れているのに対し、国内企業は自社戦略の付随的活動として捉えているケースが多いように見受けられる。 環境問題がより深刻な社会的課題として懸念されるにつれ、上記の違いは所謂ブランドイメージの毀損という非財務的なリスクのみならず、ESG投資銘柄リストなど企業の社会性を重視したファンドへの採用見送りを通じた資金調達コスト上昇という財務的なリスクの大小にも影響を及ぼすことになる。 本講座においては、まず化学・素材企業を取り巻く炭素税関連規制と廃棄プラスチック関連規制の動向を取りまとめて説明し、これらの規制に対して先進的な欧州企業の戦略分析の結果を紹介したうえで、欧州全体の新産業育成に関する共通の戦略についても触れる。その後、これらの規制を上位概念として取り込むために有効なシナリオプランニング手法の概略を説明し、自社戦略への展開手法について紹介する。