タンパク質は水溶液中で凝集しやすい性質があり、バイオ医薬品の応用などで課題になることが多いです。また、タンパク質は本質的に集まりやすい性質があり、最近では細胞内にある液 – 液相分離の現象の発見と新しい生命現象との関連が取りざたされています。
本講演では、タンパク質の溶液状態のメカニズムと制御について紹介したい。まず、タンパク質の不溶性凝集のメカニズムから、凝集をふせぐさまざまな低分子の仕組みまでの基本的な事項を紹介いたします。続いて、高分子を利用するタンパク質の機能制御や濃縮などの応用をお話しします。最後に、細胞内にある液 – 液相分離の現象について、プリオンやFUSなどの液 – 液相分離の仕組みや、細胞内オーガナイザーとしての液 – 液相分離の仕組みと最近のトピックを紹介します。
タンパク質の溶液状態に関して研究している講演者が、タンパク質の凝集の仕組みや、凝集を制御する溶液のデザイン、生命科学でトピックになっている液 – 液相分離に関して、基本的な事項からお話しいたいます。
- タンパク質の凝集
- タンパク質の凝集とは
- タンパク質構造の安定化
- タンパク質凝集抑制剤の探索と利用
- 溶解性を制御するホフマイスター系列
- タンパク質構造を安定化するオスモライト
- アルギニンテクノロジー
- アルギニンによるタンパク質の凝集抑制
- カチオンπ相互作用による芳香族化合物の溶解性の改善
- アルギニンの凝集抑制のメカニズム
- タンパク質溶液の粘度と低分子添加剤による制御法
- アルギニンの溶液添加剤としてのメカニズム
- タンパク質高分子電解質複合体
- 水溶液中での酵素機能のオンオフ制御
- 高分子電解質を用いた酵素の超活性化
- 沈殿再溶解法によるタンパク質の濃縮
- タンパク質高分子電解質複合体によるタンパク質の安定化
- 非共有結合によるPEGylation
- 液 – 液相分離と膜のないオルガネラ
- 細胞内にある液 – 液相分離の「再発見」
- 液 – 液相分離のメカニズム
- 転写・翻訳と液 – 液相分離
- mTORC1・自然免疫応答と液 – 液相分離
- 酵素の区画化と連続反応の制御
- アミロイドと液 – 液相分離
- FUSタンパク質とアミロイド
- アミロイド形成の低分子コントロールの可能性
- 酵母プリオンの凝集と液 – 液相分離
- なぜプリオンが種を超えて保存されてきたのか
- 細胞が利用するゲル化とタンパク質安定化