音声の教科書を読むと、音声には言語情報とそれに付随するパラ言語情報が含まれ、とある。そして、そのパラ言語情報の例として感情や生理的な状態が指摘されてはいるが、それらが詳しく述べられることはない。それは、それらの要因が音声工学以外の分野の専門知識を必要とするからであり、専門領域が極度に細分化された我が国の現状を象徴している。しかし、実世界に存在する課題は、音声工学用に存在するわけではなく、人の気持ちを盛り上げる話し方が知りたいとか、疲労や加齢で声がしわがれたので治したいとか、いくつもの専門領域にまたがって解決せねばならない課題ばかりである。 本講演では、人の生命活動全体の中で音声現象を捉え、そういった今そこにある社会のニーズに応えられる音声技術について解説する。