ナノ分散が大きな材料強度を確保する有効な手段であることを多くの人が実感している。しかし、容易にナノ分散体を実現する方法に関しては理解されていない。現有のニ軸押出機だけでは実現できないからである。特にコストパーフォーマンスに優れた方法、装置に関してはなお更である。最近、話題性の大きな「伸長流動分散」が最有力な方法であることが分かってきた。理論は少し難しいが、大きな利点も多い。たとえば、品質のスケールアップが実に容易に実現できることなど、今後の技術展開に注目が集まっている。現在使用のニ軸押出機に少々の付帯設備を応用すれば実現できる。今後は樹脂のナノ分散材料が一般化する時代になると考えられる。
- 基本となる技術情報
- なぜナノ分散で材料強度が向上するか
- ナノコンポジット (無機物質分散) の場合
- 高分子ナノ分散 (ポリマーブレンド) の場合
- ナノコンポジットと高分子ナノ分散の現状と伸長流動分散の位置づけ
- 主なるナノコンポジットの製造技術
- 主なる高分子ナノ分散材料の製造方法
- 全ての非相溶ポリマーブレンドが完全相溶体になる新技術
- 伸長流動分散で実現可能な分散領域と最近のさらに微細ナノ分散実現技術
- 層流域での伸長流動分散
- 伸長流動分散の基礎理論 (詳細を剪断流動分散と対比する)
- アフィン変形と非アフィン変形
- 紐状樹脂の表面に発生するくびれの発生原理
- キャピラリー数と、切断条件としての臨界キャピラリー数 (CCN) の意味
- 材料の相対粘度 (λ) の関数として解析されたGrace (CCN) カーブと粘弾性両面から解析したGrace カーブ (最近の技術、より実際的)
- 剪断流動分散、伸長流動分散におけるCCNカーブの特性
前者はλ (相対粘度) >4では分散しない。後者は全領域で分散する
- 剪断/伸長流動の共存流動におけるCCNカーブの特性
- 紐状から粒子への切断現象
- 剪断流動分散では異径粒子が発生する (不均一分散)
伸長流動分散では同径粒子が発生する (均一分散)
- キャピラリー入り口では伸長応力は材料の流出量に比例する
- Bagley Plot とBagley correction (伸長応力に比例、ΔP) 特性
- 伸長流動分散の実験解析
- UtrackiのEFM (分散ダイ) と粒子に切断する実験結果
- 橋爪のEFDM (分散ダイ) と粒子に切断する実験結果
- 伸長流動分散を用いた高分子ナノ分散の実現
- 伸長流動分散の粒子同士が再凝集しない特異な特性
- 伸長流動分散の応用例
- PA66中にHDPEをナノ分散
- エラストマー中に別種のエラストマーを微細均一分散
- HDPE中にHMWPEを微細分散。logλ (相対粘度) ≒2に対応
- 3形態の伸長流動分散装置
- ダイ方式
- EFM
- EFDM (橋爪特許)
- スリットダイ (橋爪特許) など
- スクリューエレメント方式
- Ring Element
- Blister Ringなど
- 不完全分散スクリュー方式
- Vane Extruder
- EME screwなど、主にアメリカで開発
- 伸長流動分散では品質スケールアップが容易に、確実にできる。実証実験結果
- PA66中にHDPEをナノ分散する。分散品質はΔPに比例する
- エラストマー中に別種エラストマーを分散する。同上
- 乱流域での伸長流動分散
- キャピラリー入口部の異常流動と不特定な伸長応力の発生
- メルトフラクチャー (乱流) 発生時の材料流れ
- メルトフラクチャー発生時の剪断応力の変化とBagley correction, ΔP
- メルトフラクチャー発生時の分散特性
- 材料内での滑り現象、各種異常流動現象との関連
- 内部摩擦説、α,β滑り線、すべり面 (2次元滑り現象)
- キャピラリー入り口に発生する円錐滑り面 (3次元滑り現象)
- シート成形でシート上に現れる2種類の滑り現象、波の発生
- メルトフラクチャーは材料内部の滑り現象であることを実証
- 平行平板レオメータを用いた滑り現象の確認実験
- 材料内部の滑り面が作る断層構造 (塑性変形)
断層出現と剪断が多重に発生することで、異常に高度な分散効果となる
- 2材料の接面では、初めにメルトフラクチャーが発生した材料側から不均一弾性を相方の材料接面に伝達する。微細ナノ分散の実現要因になる