なぜ今、化学分析なのか?
分析対象や内容が多種多様な高分子分析の主力手段が各種機器分析であることは言うまでもないが、次の二つの理由で、敢えて化学分析にスポットライトをあてた。
一つは、狭義の化学分析、すなわち、試薬を用いるウエットな分析法は時代遅れとみなされ忘れ去られつつあるが、機器分析にはない利点 (標準試料なしで定量可能、特定の化合物群をまとめて定量可能等) があり、時代を越えて受け継がれる価値があると考えたためである。
もう一つは、試料の前処理によって、機器分析の能力が向上し適用範囲が拡大することが認識され、近年、多くの発表や提案があるためである。
たとえば、縮合樹脂の加水分解一つとっても、簡単に実施できる方法が多数提案されている。このような前処理としての化学操作、いわば広義の化学分析について、多くの手法を整理しておくことは非常に有用ではないかと考えた。
A 狭義の化学分析
- 滴定法による高分子の組成分析
- 構造組成の決定
- 末端基の定量
- 水分等の定量
- 吸光光度法による官能基・微量成分の定量
- 呈色反応の応用
- 薄層クロマトにおける各種添加剤の選択検出
- 界面活性剤のタイプ分析への応用
- 溶媒の利用
- 特殊溶媒による成分の選択分離
- 溶媒抽出による立体規則性の簡易測定
B 広義の化学分析:機器分析の前処理としての化学操作
- 化学分解法
- 化学分解法と機器分析を組合わせる手法の利点
- 化学分解法の色々
- 加水分解を前処理とする縮合型高分子の組成分析
- ナイロン
- ポリエステル
- ポリイミド
- ポリウレタン 等
- その他の選択分解法
- ラベル化・誘導体化による分光法の選択検出能力の向上
- 赤外分光法との結びつけ
- NMR法との結びつけ
- XPS法との結びつけ
- XMA法との結びつけ
- 誘導体化・ラベル化によるクロマトグラフィーの分離・検出能力の向上
- ガスクロとの結びつけ
- HPLCとの結びつけ
- GPCとの結びつけ
- 同位体ラベル化法の応用
- 赤外分光法との結びつけ
- NMR法との結びつけ
- 溶媒の利用
- 架橋ゴムのNMR測定:溶媒による可溶化法
- 溶媒を利用した多層フィルムの層剥離
- SEM観察の前処理としての溶媒エッチング
- 水和による赤外スペクトルの変化