目的が導電性、熱伝導性、力学強度なのかによって、目指すフィラーの分散構造は全く異なります。
本講座では、溶融混練・熱プレス・射出成形や熱硬化・架橋などの実用的な方法を中心に、いかに高導電化・高熱伝導化するかをわかりやすく解説します。
高導電化については、ナノカーボンの表面基とその量や界面エネルギーに基づいて、最適で実用的な分散制御法 (導電パス形成法) を示します。
高熱伝導化については、フォノン伝導・フィラーの特徴・分散法・高充填法などの基礎から、パワーデバイス対応の高放熱性シートの開発動向までをやさしく解説します。
- はじめに
- フィラーの分散・凝集状態
- フィラーの表面基:高分子との親和性
- 導電性と熱伝導性:電子とフォノンの違い
- 導電フィラーの分散と導電パス
- 導電性におけるパーコレーション
- フォノンによる熱伝導の基礎
- 熱伝導率に関係する基礎物性値
- カーボンナノフィラーの分散制御
- 導電性フィラーの種類と特徴
- 導電性フィラーの表面エネルギー
- フィラーの分散に影響する5つの因子
- 界面エネルギーとフィラー/高分子の親和性
- 高分子の屈曲性と吸着
- ダブルパーコレーションとフィラーの局在
- 濡れ性パラメータとフィラーの局在
- 高導電化の具体例
- 多層カーボンナノチューブ (MWNT) 添加系
- MWNTの欠陥・表面基:RamanとXPS測定
- 表面基に対応した適切な高分子の選択
- 界面エネルギーと分散状態の相関
- 最良パス形成:良分散→ネットワーク形成
- 熱処理1分で劇的効果:射出成形後
- カーボンナノファイバー (VGCF) 添加系
- 微量HDPEでVGCFの末端連結→ネットワーク
- ダブルパーコレーションでVGCF局在
- 末端連結とダブルパーコレーションの併用
- カーボンブラック (CB) 充填ゴム
- 球状・房状CB充填ゴム (SBR)
- 表面基の定量:XPS
- CB表面へのゴムの吸着:AFM (位相図)
- CBの分散状態 (TEM観察) と導電パス
- 単層カーボンナノチューブ (SWNT) 添加系
- SWNT/イオン液体 (IL) のバッキーゲル
- 高分子/IL, 高分子/IL/SWNTの親和性
- SWNT孤立分散とパス形成の両立
- PMMA/IL/SWNTとPC/IL/SWNTの導電率
- 高熱伝導化のための基礎事項
- 熱伝導性フィラーの種類と特徴
- コンポジットの熱伝導率:Bruggemanの式
- フィラーと樹脂の高熱伝導化の効率
- 樹脂自身の高熱伝導化:4つの方法
- 高熱伝導化の4つの基本
- コンポジットの熱伝導率への8つの影響因子
- 高熱伝導化の具体的方法
- 板状やファイバー状のフィラーの使用
- 大小の球状フィラーのパッキング
- フィラーの連続体形成量の増大
- フィラーを連続相に局在:ハニカム構造
- フィラーを低融点合金で連結:ネットワーク
- 銀ナノ粒子の融着:ネットワーク
- ダブルパーコレーションの活用
- 多種類のフィラーの利用
- フィラーの改良:窒化アルミ, 窒化ケイ素
- パワーデバイス向け高放熱シートの開発動向
- パワーモジュールの断面構造
- 放熱シート:絶縁・高熱伝導・柔軟性・長期熱耐久性
- BN凝集体配合エポキシ樹脂:BNの配向度抑制
- BN配向技術/エポキシ樹脂:BNの垂直配向
- マトリクスの高熱伝導化:メソゲン骨格導入エポキシ
- BN/液晶性エポキシ:液晶ドメイン形成と排除BNの凝集
- フィラーとメソゲン骨格を電・磁場配向
- アルミナ高充填/液晶性エポキシ
- BN/ポリイミド (PI) の複合膜:凝集体BN
- 垂直型ダブルパーコレーションと針状粒子の併用 (針状ZnO/非相溶PIブレンドの複合膜)
- フィラー高充填樹脂/別フィラーの複合体