近年、「質感」が心理学や脳科学における大きなテーマの一つとなりつつある。質感は、英語圏では物体の材質 (material) の知覚を指すことが多いが、日本語では、映像の質感とか楽器の音の質感というように、より広い意味で使われる。それは、複雑で捉えがたい感覚信号のパタンから何らかの安定した知覚表現を取り出す能力と関連している。この能力は、脳のどのような情報処理に支えられているのだろうか。 本講演では、その謎に挑む基礎研究の最新成果を様々なデモや錯覚を交えて紹介するとともに、それらが指し示す質感認知の理論が通信から工芸まで様々な技術分野にどのように応用されうるかを議論する。