本セミナーでは、セルロースナノ繊維を高効率・大量生産の方法、ナノ複合新材料への応用について詳解いたします。
木材細胞壁は自然が作り出したナノ複合材料といわれている。細胞壁中のセルロース分子は単分子ではなく規則的に凝集し数十本集まった結晶性を有するミクロフィブリル (以下セルロースナノ繊維と称する) を形成している。 また、リグニン及びヘミセルロースと強固に結びついて三次元ネットワーク階層構造を作り出している。それ故に、木材細胞壁は酵素など生化学的あるいは強酸処理などの化学的処理に対して非常に強い分解抵抗 (recalcitrance) 性を持つ。 近年、木質バイオマスからのセルロースナノ繊維の効率的調製法及び高機能性材料への応用について研究が注目を集めている中、木材細胞壁が持つ分解抵抗をどう克服して、いかに効率よくナノ繊維を取り出せるかが研究のキーポイントになっている。 演者らは木材の組織学・化学的な理解をベースに、水熱及びオゾン処理/機械的解繊複合処理を活用して、セルロースナノ繊維を高効率・大量生産可能な方法を開発し、ナノ複合新材料へ応用する研究を行っており、その研究内容を紹介する。 また、世界で行われている天然繊維を用いた強化バイオ複合材料における世界の現状と研究動向も紹介する。